気づいたら私は学校の屋上に来ていた。

真っ暗な空 ただぼーっと空見上げて…痛い身体を手すりに預け今何が起きているのか考える事を放棄した。



ガチャん


その音に顔を上げ扉へ視線を向ける。



「…柊…くん?」


「…なんで」


お腹を抑え片足を引きずっている柊くんの姿。明らかに様子がおかしかった。


「…大丈夫?」


「…ぁー、うん、でも、なんで…?」


「柊くんこそ」


「なんかお互いボロボロだな…」


「そう…だね」


お互い何も聞かなかった。

ただそっと隣に座った。

いつもなら距離のある座る位置も今日は腕と腕が触れ合う距離。


柊くんの匂いが夜風と共にやってくる。

この空気が心地よかった。

現実から少し逃げれた気がしたから…。


ただ2人で夜空を見上げた。


「…まだ死にたいと思う?」


「そう…だね あの時より死にたいかもしれない」


「そっか」


「………」


「俺たちには神様がいないみたい」


そう言った柊くんの瞳は真っ暗で


「君が死んでも明日は来るし、世界は何も変わらない」


「…………」


「…それでも、俺と一緒に死ぬ?ふたりで」


初めて目が合った。


泣きそうな顔して柊くんは私に聞く。

その顔はいつも大人びて見えていた柊くんの姿とは全く違う。幼くて小さな子どものよう…。でも何かを決めた固い意思も見える。

私は迷うこと無く…


「…ふたりなら怖くないね」


そう言うと彼は少し微笑んだ。

生きようという選択はなかった。このまま生きていく方がお互いに辛かったから。


生きるのが怖かった。

逃げ道がこれしかなかった。

ただそれだけだった。

初めて彼と手を繋いだ時少し汗ばんでいたのを覚えてる。


そして私たちは鳥になった。

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