昼休みは屋上に行って何かを話すわけでもなく柊くんの隣で過ごす。

これが日課になろうとしていた。


隣に座る柊くん。

柊くんは本を読み進めてる。

その横顔はとても綺麗だった。


ふと柊くんの腕が目に入る。

季節は夏。半袖のシャツから伸びる腕。

風に揺れてシャツが少しめくれる。

白い肌に似つかない青あざ。


私はスっと腕を伸ばしていた。

それに気づいた柊くんは、本を立たみ私から咄嗟に距離をとる。


「…っ」


「…ぁ、ごめん その怪我どうしたの?」


「……ぶつけただけ」


「そうには見えない誰かに殴れたようにみえ…」


柊くんは無言のまま立ち上がって屋上を後にした。


これが私と柊くんの最後の屋上での昼休みだった。

あれ以来柊くんは屋上に現れることはなかった。


私は柊くんの来ない屋上でずっと彼を待つ。

来ないと分かっているのに…。

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