あくる日の準備⑤
「一緒に行くにきまってるでしょおおお!?なに言ってるのおお!ひとりで行かすわけないじゃん!」
「あはは、ここまでとは」
愁は笑いながら項垂れる。
「翼~、真理愛は初めから一緒にいこうっていうので話を進めてたんだよ~」
壱夜ボソッと呟く。
「そう、なの?」
「そうだよ!翼ちゃんのバカバカ~」
ひとりで買いにいくと思っていた翼は少しほっとする。
今まで何かするときは全部ひとりでやってきた。誰かに頼ったり、一緒に何かをしたことがなかったからだ。
いつも母は『自分でなんとかしなさい』と、たったその一言だけを翼つばさに向けていた。
もとから‘‘頼る‘‘ということが翼の頭にはなかったのだ。
「買わなくていいよ」
翼の耳元で聞き覚えのある落ち着いた声がする。
耳を介して聞こえてくる声はあまりにも刺激が強すぎて耳を抑え振り向く。
「み、かげ…」
翼が座るソファーの後ろに突然と現れた御影。
「急に出てこないでよ~、翼ちゃん驚いてるんじゃああん!」
「ていうか買わなくていいって?」
愁が御影の言葉を拾う。
「もう、用意してあるから」
「え?」
「用意してるの!?どんなドレス!?」
翼以上にはしゃぐ真理愛。
「秘密、当日のお楽しみ」
「へぇ~、御影やるじゃん~ん」
「お気に召してくれるかは分からないけど」
そういって笑う御影。
「へえ~御影が選んだドレスかあ~。楽しみだなあ~」
真理愛はニヤニヤ笑って御影をみる。
「確かに、気になるわ なっ壱夜」
「うん、御影がどんなの選ぶか想像つかねーもん」
そうして当日までの楽しみが増えたのであった。
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