小さな冒険⑥

ガチャッ


「御影だけ…?」


専用室の扉を開けると御影一人だけ部屋にいた。


-真理愛はいると思ったんだけど…


「琉伽…珍しい。ここに来るなんて」


「さっき、翼ちゃん達に会ってさ。今なら御影一人かなーなんて、思って。」


「…ぁ、そういう事」


「真理愛はいるかなって思ったんだけど、感が外れた」


「さっきまで、いたよ。」


「そっか」


琉伽はソッとソファーに座る。


「ねぇ、御影。さっき海偉と陸玖ちゃん来た?」


「うん」


「…やっぱり」


「そんな気がした」


「本当、感が鋭いね」


「ん〜なんか感が当たるんだよね、昔から。海偉はなんだって?」


「【リアゾン】から人が一人消えたって」


「…俺、記憶消したよ?」


その言葉に御影は一瞬、書類から琉伽に視線を変える。


「分かってる」


「なんで。分かったのかな。俺、翼ちゃんに関する周りの人間、全ての記憶消したのにさ。」


翼を知っている人間、学校から記録…全て消した。


「あの母親の記憶も消した。行方不明届けを出すとも思えない。全ての記憶から翼の存在は消えた…。だからあいつの言う消えた人ってのは翼じゃない」


「だよね…」


「…最近色々な事が起きて、頭が疲れる。」


御影からその言葉を聞いて、琉伽は目をまん丸にする。


「…珍しい、御影が弱音吐くなんて」


「…え?」


「あんまり、俺らにそんな事言わないじゃん」


「…あーそうだった、今のなし」


「なしって。御影はもっと周りを頼りな。」


ソファーから立ち上がって、御影に近づく。


「…昔みたいにさ」


そう言うと御影は目を伏せて、「そうだね…」なんてボソッと呟いた。


-昔になんて戻れないのに…。

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