小さな冒険④

「温室…」


キィーと大きな扉を開く

ガラス張りの天井から煌々と太陽の光が降り注ぐ。


-暖かい…


綺麗な植物達に陽の光が当たって水滴に反射してキラキラ光る。心地良い暖かさに眠気が襲う。なんだかここは落ち着く。



「あれ、愁様、庵様?」


落ち着いた声が後ろからした。

振り返ると、そこには柔らかい雰囲気の細身の男性の姿。


「ゼっさん」


「ゼツさん」


「珍しいですね、お二人が来るなんて」


「ちょっとなあ~」


愁と庵に交互にゼツは挨拶をして翼に視線を向ける。


「この可愛らしいお嬢様は?」


「翼!新しい仲間」


「……こん、にちは」


ゼツはボーっと翼を見る。


「?」


翼を通して違う誰かをみているような、そんな不思議な眼差し。翼が疑問に思っていると…


「こんにちは、私はこの温室庭園の世話をしている十全じゅうぜん ぜつといいます」


何事もなかったかのように挨拶をする絶。


「あ、伊崎翼です」


目が合ってニコッて笑う絶。

少し恥ずかしくなって目を背ける。


「翼に【学園】内案内してんの!」


「そうなんですね、気に入る場所はありましたか?」


「……えーっと」


まだ図書室しか行ってない…返答に困っていると。


「まだ、図書室しか行ってないんだ」


横にいた庵が言う。

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