小さな冒険①

「ここが図書室っ!」


通されたのは天井近くまである大きな本棚がズラーっと並んでいてとてつもなく広い空間。

本の数が尋常じゃない。


「…凄い」


「凄いだろ!【学園】の図書室は【リデルガ】で一番の書庫だからな」


色々な年代の本がズラーっと並んでおり、本を読むため専用のふかふかのソファーや自習用の机と椅子も並ぶ。

すると奥の方の出窓に見慣れた姿を見つけた。

背が高くて少し長い薄いグレーの髪を後ろで結んでいる。


-あれは…


するとタッタと庵がその人物目掛けて歩いていく。


「ぁ、琉伽るかか。いおりが嬉しそうに駆けていくから誰かと思った」


いおりは私には見せないような柔らかい表情で琉伽るかと話をしている。


「…仲、いいの?」


いおり琉伽るかだけに懐いてるからな~言えば、ご主人様と犬だな、あれは」


「………」


あんな柔らかい表情もできるんだ。

いつも眉間に皺を寄せてぶっすとした顔をしている。いつも不機嫌そうな…。

つばさしゅうがその光景を眺めていると、見られていたことに気づいた庵はバツが悪そうに顔を逸らす。いおりの表情に気づいた琉伽るかもこちらに気づき柔らかい笑顔でこちらに手をふる。

それを合図にしゅうがふたりのところまで歩き出すので翼もその後を追った。


しゅうつばさちゃんも。3人で何してるの?」


つばさに【学園】内、案内してんの」


「へぇ~。よかったね、つばさちゃん。どこ行ったの?」


「まだ…ここがひとつめ」


「そっか!じゃあ、僕からのおすすめはあそこかな」


笑う琉伽るか

つばさが「?」と顔を傾けると…


「あぁ~あそこか!おっけ~、行くぞお!いおり


「ぇ、ちょっ」


しゅうつばさの手首を掴んで図書室から出ていこうと走る。


「はぁ」


いおりはうんざりしたようにため息をついて、後を着いてくる。


「じゃあ、またね。つばさちゃん」


琉伽るかはいつものように笑った。

そのいつもの笑顔がつばさはなんだか怖いのだ。

本心が見えなくて、何を考えているのか分からなくて…ただただ怖い。


優しい笑顔と裏腹に本心はー…。

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