リデルガ⑭

「まずは吸血種ヴァンパイアの成り立ちから【学園】で6つの花と書いて六花ろっかと呼ばれるものがいる。六花とは吸血種ヴァンパイアの中で最も位の高い6つの家柄のことを指す言葉。そのひとつが俺の血族、鋳薔薇いばら家。そして他の5つの家柄を合わせて六花と称してる」


「…血族」


「うん、吸血種ヴァンパイアは血で家の位が決まるんだ。六花と言われる一族は主に自分の一族だけで繁栄したきた、言えば純血の一族なんだ。まあ、吸血種ヴァンパイアとしての血が濃いってこと」


「純血…」


「俺の血族、鋳薔薇いばら家は始まりの吸血種ヴァンパイアって言われてる。六花の中でも位が一番高い。その派生として繁栄していったのが他の5つの一族」


「…それって」


「うん、桃李とうり家、観月かんげつ家、鷗外おうがい家、そして南雲なぐも家、安楽吹あらぶき家、その5つの一族。南雲なぐと家、安楽吹あらぶき家の2人とはまだ会ってないね」


「……うん」


「言ってしまえば吸血種ヴァンパイアは元をたどれば全員が始まりの吸血種に行きつく。少なからず全員薄い薄い今にも切れそうな糸のような血縁関係にあたる。そして六花ろっか吸血種ヴァンパイアはそれぞれ特殊な能力を持って生まれる。」


「特殊…能力」


つばさの母親や生徒の記憶を消したのは琉伽るかの能力、そして真理愛まりあの能力は治癒、そしてつばさが襲われた時に壱夜が発揮したのも能力の一種で心身強化という能力。それぞれ純血に近い吸血種ヴァンパイアには能力があるんだ」


-そうか、壱夜いちやが助けてくれた時男子生徒を拳ひとつ廊下の端に飛ばしたのも能力の一種だったんだ…。


淡々と話す御影みかげつばさはある事を思う。


-ということはここにいる皆は吸血種ヴァンパイアの中で一番位の高い一族の人達で【学園】の生徒の中で一番権力のある人達なんじゃ…。


「まっ、そういうことだな」


御影みかげではない低い声がした。


「俺達は将来この【リデルガ】を任されているような吸血種ヴァンパイアだ、普通お前のようなダンピールが一緒にいていいような吸血種ヴァンパイアじゃないんだよ、俺達は」


「また、勝手に心の声読んだよ。いおりの能力は人の心の声が読めるからつばさ気をつけろよ~」


ソファーに寝ているしゅうが呟く。


-人の心が読める?


声のする方に視線を向けると、扉付近に二人の青年が立っていた。


いおり弦里げんりだああ!久しぶり!!」


真理愛まりあは嬉しそうに二人の名前を呼ぶ。


「君がつばさちゃんだね!どうも、初めまして安楽吹あらぶき弦里げんりです」


青年はニコッと笑う。

その横に立っている仏頂面の青年はつばさをジッと見つめる。キリっとした鋭い目つきと眉間に皺が寄っており少し怖い。


「ちょっとー!いおりそんな目で見ないでくれる?つばさちゃん怖がってんじゃん!!それに勝手に心読まないでっていつも言ってるでしょ!!」


「なんつー目で見てんだよ…」


弦里げんりいおりの頭をぽかっと叩く。


つばさちゃん、怖がらなくていいからね。あの目つき悪い黒髪野郎は南雲なぐもいおり、ほっといたらいいから」


「…ぁ、うん…」


「話の続きいいかな?」


「ごめんね、御影みかげ。続けて?」


弦里げんりは笑って御影みかげに謝る。

話を続けようとする御影に対しひとつ疑問が浮かぶ。

つばさいおりが言うように吸血種ヴァンパイアでも人間種でもない忌み嫌われるダンピールだ。

そんなつばさが純血の彼らと一緒にいる事が何故許されている?


「どうして、私は…」


真っ直ぐに翼をみる御影みかげ

そのつばさの様子に言いたいことは何となく察しがつく。

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