リデルガ⑬

あれから数日、なんとなく【学園】に慣れてきた。

放課後はいつも、御影みかげたち専用と言われているこの豪華な部屋で過ごす事が多かった。

この部屋は、御影みかげを初め琉伽るかしゅう壱夜いちや、そして真理愛まりあにかぐや、後他に2名 合計8人が自由に出入りできる。


なぜこの8人なのか、つばさはまだ知らない。

この部屋に来て特に何かをするってわけではないが、それぞれ読書をしたり勉強したり昼寝したりゲームしたりお菓子を食べたり、【リアゾン】での放課後と何ら変わりはなかった。


ただ違うのは【リアゾン】ではつばさはこんな”普通”の放課後を送ったことがないということ。

学校が終わったと同時に家に帰り、母親の目に入る場所で生活をする。

こんな自由な生活はしたことがない。

そして『リデルガ』に来て何となく分かったことがある。


それは御影みかげはいつも忙しそうということ。

何やら書類を読んでは印を押したり、どこかに電話したりただの学生ではなさそうな。

家でも食事以外では見かけないし、ちゃんと寝ているのかも正直不明。

今もずっと書類に目を通し、眉間に皺を寄せている。


他の人はというと向かいのソファーではしゅうが占領して昼寝をしているし、ソファーの横にある大きなテレビでは壱夜いちやがゲームをして大騒ぎしている。


そしてあの日以来 琉伽るかの姿は見ていない。


つばさちゃん?」


ソファーに座ってボーっと御影みかげを眺めていたところ真理愛まりあに声をかけられる。


「ボーっとしてるけど大丈夫?」


「うん、大丈夫」


御影みかげが気になる?」


「え、あ、いや、あの。いつも忙しそうだなって」


そう答えると真理愛まりあは信じられないというような表情をする。


その顔を見てつばさは思わず「え?」と声が出る。


「もしかして、何も聞いてないの?」


「何もって…?」


その反応を見てほっぺを膨らまし、キッーと御影みかげを睨む真理愛まりあ


「ちょっと、御影みかげー!」


御影みかげを指さし、ズンズンと御影みかげの席へと向かい見ていた書類を奪い取る。


つばさちゃんに私たちのこと何も言ってないの?こっちに来て何日経ってると思ってるのぉー!てっきりもう話してると思ったのに~!」


書類を取られた御影みかげは「はぁ~」とため息をついて席を立ちつばさを見る。


「?」


頭にはてなが浮かんだ。

その様子を見てソファーで横になっているしゅう


「話てくれるって」


「話す?」


「俺達のこ~と」


そして御影みかげは静かに語り出した。

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