リデルガ⑫

その瞬間、パチンっと音が鳴った。

その音と共につばさの視界はクリアになった。


「視みちゃだめだよ、琉伽るかの目は」


真理愛まりあの手により視界は遮られていたのだ。


「ぇ…」


「あれ、私」


「俺ら…何してんだ?こんなとこで」


集まっていた数人の生徒は口々にそういってばらけていった。


「今の…」


「記憶を消したんだ、琉伽るかがね」


「ごめんね、急に」


琉伽るか~、ありがとっ!」


「いや、真理愛まりあこそ。つばさちゃんの目隠してくれて助かったよ」


-確か、お母さんの記憶も…。でもあの時はお母さんの頭に触れていた。


「俺、視線を合わすだけでも出来たの記憶なら消せるんだ。あの時はどうも。まだ自己紹介してなかったよね、俺は桃李とうり琉伽るか琉伽るかって呼んで?」


つばさの考えていることが分かったのか琉伽は笑顔で教えてくれた。


「ところでどう?【学園】は」


「 ぁ、えっと」


「おおお!琉伽るかじゃねーか!」


その時大きな声が耳を劈く。

声のする方を見ると、そこには藤堂とうどうの姿。

琉伽るかは一瞬嫌な顔をしていつも通りの笑顔に戻る。


「お前、学年上がってからあんまり学校来てねーらしいじゃねーか!」


藤堂とうどうからつばさ真理愛まりあに視線を変えた。


「じゃあ、僕はここで。またね、つばさちゃん」


そういって逃げるように行ってしまった。


「って、おい!琉伽るか~!」


「逃げられちゃいましたね、先生」


真理愛まりあが笑いながら藤堂とうどうの肩をポンと叩く。


「やっぱり?なあんか避けられてんだよな~。あんまり学校も来てねーみたいだしよー。真理愛まりあなんか知らねえーか?」


「ええ~特には。ていうか先生もう担任じゃないじゃん」


「そうなんだけどよー、一度もった生徒はいつまでも気になるんだよ」


「ふーん、ていうか先生何故ここに?」


「いや、なんか生徒が集まってるって聞いて喧嘩か何か始まったのかと思ってな。六花のやつらか?処理してくれたのは」


「うん!ばっちり」


「…そうか」


藤堂とうどう琉伽るかの背中を眺める目がなんだか少し優しかった。

追いかける事も出来たのに、それをしなかったのは藤堂とうどうの優しさからだろうか。

こうしてつばさの【学園】での一日目が終わった。

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