リデルガ⑥

御影みかげ~」



屋敷を出ると御影みかげはボーっと空を見上げていた。その姿はとても様になっていて何かの雑誌に載っていてもおかしくない。


つばさちゃん、着替えたよ~」


真理愛まりあの声に反応し空から視線を二人に移す。

そしてつばさの姿を見るなり微笑んだ。


「似合ってるね」


「おお~よかったね!つばさちゃん」


「…ぁ、うん」


御影みかげは滅多に人のこと褒めないからね~」


「そう、なの?」


つばさが聞くと御影みかげはニコッと笑って、向かいに止めてある大きな車に向かった。


「あの容姿で、家も六花ろっかのひとつだもん。私たち吸血種ヴァンパイアの頂点にいるような人だから、褒めるっていう概念がないんだよ」


真理愛まりあがこそっと教える。


「ろっかって…」


「置いてくよー」


真理愛まりあが言った”ろっか”について聞こうとした時、車の中から御影みかげの急かす声につばさの言葉はかき消された。


-”ろっか”ってなんだろう…


黒いスーツを着た御影みかげの屋敷の使用人であろう人が運転する大きな車で【学園】まで向かう。

今から向かう【学園】とは一体どんなところなんだろうと少し緊張するつばさ

窓から見えるのは綺麗な緑色の木々。

御影の住む屋敷はおとぎ話に出てくるような森の中に突如大きな屋敷が出現するような、湖に囲まれていた。


そして窓の世界は映り変わる。

森を抜けて石畳の都市が見えてくる。

西洋の町のような雰囲気なのに近未来的な建物もあり、とても不思議な都市がそこにはあった。【リアゾン】とは全く違う。

独自に発展した文明【リデルガ】をその目で翼は初めてみた。



つばさちゃん【リデルガ】に釘付けだ~」


窓の外を食い入るようにみていると真理愛まりあがニコニコした笑顔で言う。


「そりゃそうだろう」


足を組み肘掛けに肘を置いて御影みかげは発する。


「そんなに違うの?」


「行ってみたらわかるよ」


「ふーん」

  

隣で二人が話しているのをそっちのけで映り変わる世界に釘付けだった。

まさか自分が【リデルガ】に来れるなんて過去のつばさは夢さえみなかった。


すると少し遠い丘の上に大きな大きなまるで城のような建物が見えた。


「あれは?」


「あ!あれは」


「【学園】」


御影みかげは視線をこちらに向けることなく言う。


「もう!私が言おうとしたのに!」


「…あれが、【学園】…?」


「そうだよ!あれが私たちが通う【学園】!」


昔読んだおとぎ話に出てきた城のよう…。


窓から【学園】を眺める。

これから翼はあそこに通う。

自分のことなのに何故か、どこか他人事に思えるこの感覚はなんなのだろうか…。

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