リアゾン③

その言葉と共にガラガラと扉を開き、二人の青年が入ってきた。

教室にいた全員が息を飲んだのが分かった。

入ってきたふたりの気配はこの【リアゾン】の人間とは全く異なったからだ。


彼らはきっと…


-ヴァンパイアだ…


つばさはこの時初めて吸血種ヴァンパイアと対峙した。

ひとりは金髪の髪に大きな瞳、白い肌。

この世のものとは思えないほど美しい容姿に人々を虜にする雰囲気を纏い、もうひとりはブルーに近いグレーの長い髪を後ろでひとつに纏めている。ふたりとも身長はおそらく180cm近くだ。


教室にいる誰もが彼らの虜になっていた。

つばさを除いては…。


「【リデルガ】の住人の方です。」


先生の声が少し震えているのが分かった。

そりゃそうだ、この世界はわざわざ人間種と吸血種ヴァンパイアの為にふたつに分かれている。お互いがお互いを干渉しないように…。

人間種側も吸血種ヴァンパイア側もお互いに本当に存在するのだろうかと疑いたくなるくらいに両国の交流は一切なかったのが、数年前までだ。


ここ最近で国のトップ同士が交流を始めた。

様々な意見が渦を巻きながらも、両国の交流を続けていこうとしているのが今この時だった。

そんな中現れた本物の吸血種ヴァンパイアにクラスの生徒たちは見惚れていた。

先月両国の交流会の模様がテレビ中継された、その時に【リデルガ】側のトップである人物をテレビ越しに初めて見た。

それが今日この目で本物を見ることになるとはきっと誰も想像していなかっただろう。


「…【リデルガ】」


生徒のひとりがぽつりと呟くその瞬間教室は悲鳴に包まれた。


「「きゃあああぁぁあ!!」」


「イケメンよ!イケメン!」


「凄い!吸血種ヴァンパイアって本当にいたんだ!」


「やばいやばい、やばいよ!超かっこいい!」


口々に生徒たちは興奮した様子でガヤガヤと喋り倒す。

急に変わった空気に、戸惑いを隠せない【リデルガ】のふたり。


「…凄いですね」


「………」


ひとりは戸惑いながらも笑顔を作り、その光景みて笑っている。もうひとりは呆然とその光景を眺めていた。


「ちょっと静かに!自己紹介してもらいますから!」


先生の言葉に瞬時に静かになる教室。

彼らの自己紹介に興味津々だ。

彼女たちのキラキラした目に晒されながら戸惑いを隠し平常心を装うふたり。

そして金髪の青年から口を開いた。


「【リデルガ】から参りました。鋳薔薇いばら 御影みかげと申します。」


「同じく【リデルガ】から参りました。桃李とうり琉伽るかと申します。」


そして教室中に拍手が起こる。


鋳薔薇いばらさんと桃李とうりさんです。今日一日この学校で【リアゾン】の学校制度について見学するとの事です。急なことですが今日一日おふたりも一緒に授業を受けて頂きます。」


ニコニコと笑顔を作る鋳薔薇いばら御影みかげという男。

つばさはなんだかその青年たちに違和感を覚えた。なんだかさっきからこちらを見ているような感覚に陥る。

すると次の瞬間バチっと彼らと目が合った。

つばさは咄嗟に目を逸す。


つばさちゃん、どうかした?」


隣の凜々りりが心配そうに声をかける。


「ううん、なんでもない」


つばさはそう答えるので精一杯だった。

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