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第34話
私が、善くんへの気持ちを断つために電話番号を変えたのが悪かったんだろう。善くんは、20歳の愚行の原因を知って、私の下心の存在を知って「ああ、ふったらこいつはまた音信不通にしやがる」と思ったのだろう。
だから、善くんは私のことを彼女扱いした。普通の彼女にしていることを私にもしてくれたんだ。もしも梶くんとのことがなかったら、行為も最後までしてくれていたのかなと想像して、恐ろしくなる。
私が頑張ったばかりに。
悪いことをした。
友達に、無理にハグをしたりキスをしたりして、具合が悪くならなかっただろうか。私と会うのは嫌だと思いながら時間を割かせてしまったのではないだろうか。
ああ、頑張らなければよかった。
そういえば、とすっかり忘れていたことを思い出す。昔、よっちゃんたちが、友達の男の子に告白されて悩んでいた。「友達だと思っていたのに裏切られた」とか「友達だと思っていたのに気持ち悪い」とか、そういうことを言っていたような。
経験がないのでわからなかった。もっと早く思い出せたらよかったな。
やっぱり、頑張らない方がよかった。
後悔しても、何も変わらないのに。
翌日、目を覚まして、いつ何時でも寝られる私をいっそのこと褒め称えたくなった。そしたら、善くんも隣で普通に寝ていたので、一層褒め称えたくなった。
9時頃になると善くんが起きて、普通に「おはよう」と言うから、私はそれがとても嬉しかった。
「おはよう! 今日晴れみたいだよ」
「まじ。どっか行きたい?」
「んー。朝ご飯を食べに行くとか、どう? やめとく?」
「なんで? いいよ、行こ」
布団を畳んで、洗顔をして、歯磨きをして。
「善くん、確認なんだけど、友達に戻るのは平気?」
「他に何の選択肢があんの?」
「顔見知りに戻るとか?」
「友達で」
「わかった」
服を着替えて、薄くメイクをして、お店を決めて。
「いとはいいの? それで」
「善くんがいいなら、私は全然」
「俺も全然」
「どうかな。善くんのいいよは怪しいもんな」
「まじだって」
「嫌なことは嫌って言うんだよ。自慢じゃないけど私は気が利かないんだから」
「いとほど気が利くやついねえよ」
「どうして目を逸らすの?」
コートを着て、靴を履いて、家を出て。
「じゃあ朝ご飯食べて解散ね」
「映画行く?」
「映画行く」
「昼も一緒に食う?」
「お昼も一緒に食べる」
一緒に笑って。
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