4(終)

 



「おーす、俊也♪」


 数日後の昼営業、梨沙が姿を見せる。


「こないだは……ありがとね」

 うっすらと頬を朱に染めて、


 ――いまだ処女のまま。


 お互いの距離を、探り合っている。


「外回ってたらお腹空いちゃった! 今日のランチなんだっけ?」

「パスタランチがアマトリチャーナ。でも俺的にはこっち――」手書きの黒板を指し示す。

「――背徳のチーズたっぷりハンバーグ。本日限定、赤字覚悟のサービスランチとなってますがいかがでしょう?」

「うーんギルティ‼︎ でもいっちゃう!」

 景気のいい言葉を聞いたところで、俊也は微笑み一つ、「プレーゴ」と頭を下げて彼女を席へと案内した。



「ね、俊也。今度の休みなんだけど」

 お冷を手渡すと、梨沙は神妙に変わる。

「な、何でしょう?」

 今度はどこに行くのだろう。心臓に悪い展開は御免こうむりたいのだが……。


「――お父さんの、」

「――へっ?」

 虚を突かれる俊也。

 見上げた梨沙の口が動く。


「ちゃんと、お参りしたいなって」


 ――これからのことを、二人で。


 遅れて俊也も、理解することができた。これも一つの、決意の表れなのだと。



 刹那、梨沙に着信。

 俊也もオーダーの声を聞いて。


「はい、松田です!」

「ただいまお伺いします!」

 宿り木を離れた二人は――それぞれの時間へと戻っていく。

 

 しかし再び顔を合わせれば。

「また、落ち着いたときに話そ?」

「そ、そうだな」

 お互いの距離を測りながら。

 

 心の中で――抑えきれず叫ぶのだ。


((――あ~、好き~……ッ!))


 二人が幸せに結ばれるのは、まだもう少しだけ、先のお話……。

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限りなく「両想い」――な両片想い みやび @arismi

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