「撤退戦」

「今回も私が殿を務める。それとそちらに少年兵一人を送った、回収を頼む」


了解ヤー


 通信が切られ狭いコックピットに静寂が訪れる


「さあ、やろう」


 連中に思い知らせてやる

 名前付きネームドの恐ろしさというものを


 600メートルほど本隊と離れながら警戒を続ける


『……ぇ……。……ぃ…………。』


「ん?」


 少し遠くから話し声が聞こえる


「こちら敵を発見。排除に移行する」 


 返事が聞こえる前に通信をきる


「オープンスピーカーをオンにして会話……不用意だな」


 少し近づけば会話が聞こえてくる


『おい、敵兵は居たか?』


『どこにも見当たらない。撤退でもしたあとなんかね?』


「敵数は2人、距離は400メートルといったところか」


 相手はまだこちらには気づいていない

 こんな絶好なチャンス……


「動いていても外さない」


 64式小銃から閃光と発射音が響く

 放った弾丸は4発

 それらは2機のメインカメラに命中する


『なんだ!?』


『視界が!?』


「気付いたところでもう遅い」


 もう私は全力でブースターをふかし接近している


『く、くそったれ!!』


 1機は音がする方へ乱射をしてくるが狙いが定まらない攻撃など当然避けられる


「1機目」


 応射してきた敵機を押収したナイフでコックピットとを突き刺す


『祖国に栄光あ……』


 断末魔と共に活動を終了する


『よくも!!』


 もう一機は拳を使い殴りかかってくる

 右、左。雑に放たれる拳は避けやすい

 そうしてお返しに一撃蹴りを入れて吹き飛ばす


 轟音と共に地面に倒れ伏す状態の相手に銃口を向ける


 手は震えていない


「check」


『お見事』


「fire」


 銃声が鉄を貫通する音が響き煙が出てくる

 そうしてカチカチと、弾切れを知らす音が鳴り引き金から指を離す


 煙が晴れて見えたのはただの鉄スクラップだった


「……それはどうもありがとう」


 誰にも聞こえないはずの声がコックピット内に木霊した


『理小隊長!!大丈夫ですか?』


「大丈夫だ。こっちは終わった、すぐに向かう」


 そうして私は基地へ向けて歩みを進めた

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