第15話:「真実の愛」

 エリシアは、目の前に広がる光景に目を見張った。そこには、ガルドとセリアが楽しげに談笑している姿があった。二人はまるで、誰も邪魔できない幸せなひとときを過ごしているかのように見えた。


「ガルド……セリア……?」


 エリシアは驚きとともに、目の前の光景を受け入れることができなかった。ガルドが、優しい微笑みを浮かべてセリアに触れている。その手は、まるで彼女を愛おしむかのように、ゆっくりとセリアの頬に触れていた。


「どうして……?」


 エリシアの胸が締め付けられるような痛みでいっぱいになる。ガルドは、自分の隣にいるべき存在だと思っていた。だが、今、目の前で彼が愛しているのはセリアだった。


「ガルドさん……もっと、そばに来て……」


 セリアの甘い囁きが、エリシアの耳に届いた。ガルドは何の躊躇もなく、セリアのそばへと歩み寄り、彼女の腰に手を回した。そして、次の瞬間、二人の唇がゆっくりと重なり、深いキスが交わされた。


「……ガルド……!」


 エリシアは息を呑んだ。目の前で起きていることが信じられなかった。セリアの手がガルドの胸元に触れ、彼の身体を引き寄せている。エリシアの目の前で、ガルドは完全にセリアのものとなっていた。


「これは……違う……」


 エリシアは必死に自分に言い聞かせようとしたが、その光景があまりに現実味を帯びていて、心が揺れ始めた。


「ガルドが……セリアと……」


 涙がエリシアの頬を伝った。彼女は、ガルドとセリアの幸せそうな様子に心が引き裂かれそうになった。しかし、次第にその涙の裏に、強い違和感が広がっていった。


「ガルドが……私を愛しているはずなのに……」


 エリシアは自分の心に問いかけた。ガルドとの絆は、これまでのすべての戦いで育まれてきたはずだ。セリアが彼にこんな風に大胆なことをするはずがない、とエリシアは感じ始めた。


 その時、ふとエリシアの心の奥底で囁くような声が聞こえた。それは、彼女自身の魂の声であり、彼女の愛を試す言葉だった。


「ガルドは……お前の愛を待っている。お前の本当の愛を証明する時が来た……」


 エリシアは目を閉じ、深く息を吸い込んだ。そして、もう一度ガルドとの絆を思い出した。彼女は確かにガルドを愛していた。彼もまた、エリシアを愛していた。これは、ゼヴォルスが見せた幻に過ぎないのだと、心の中で叫び始めた。


「これは幻……ガルドがこんなことをするはずがない!」


 エリシアは叫び、胸の中で燃え上がる愛の力を呼び起こした。その瞬間、セリアとガルドの姿が揺らぎ始め、次第にその形が崩れ始めた。


「私とガルドは……真実の愛で結ばれている!」


 エリシアの叫びに応じるように、光が彼女の体を包み込み、強烈な愛の力が広がった。ガルドとセリアの姿は一瞬で霧のように消え去り、エリシアはその場に立ち尽くした。


 エリシアは、目を開いた。そこは幻ではなく、現実の森だった。ガルドはまだ幻覚の中に囚われているが、エリシアは確信していた。彼を助けるために、自分の愛の力を信じて戦うと。


「ガルド……私はあなたを取り戻す。私たちの愛は、誰にも壊せない」


 エリシアは決意を胸に、ガルドの元へと向かった。


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