第12話

改めて聖地巡礼について説明することにした。

小説の場合私もアニメのモデルとなった場所はあまり知らない。

なんせライトユーザーゆえ。

アニメ・小説の舞台や、著名人と縁のある場所や、ファンにとって思い入れのある場所を巡ること。

と、言い終わるとすかさず質問が飛び交う。

ノラえもんの舞台は実在しているのか。


「してます。空き地のモデルもあります」


「「あるのっ!?」」


「い、行きたい!」


行きたいと言い始めたのは大統領。

言うと思った。

だから、今まで言わなかったとも言える。

飛び出して地球に行きそうだった。


「どこ?どこだい?ノラえもんファン筆頭の大統領に言ってごらん??」


「大統領の食いつきヤバ」


思わず日本語で呟いた。


「翻訳機能無しで日本語を喋るの、久しぶりに聞いたな」


ジャニクにアルメイが頷く。


「東京です」


「東京か……」


大統領の頭の辞書により東京を検索した。

日の本、言霊の幸う国、蜻蛉。

その日本の都市として今、様々な場所の中心地。

その東京にノラえもんのモデルが。


「行きたい。行きたい」


「私達も行きたいです」


アルメイが無表情で居ながら愛用のポケット式亜空間から漫画を取り出して見せる。


「私達は観光で地球の首相とかに言っておけばいつでも良いみたいだよ」


「ええ!いいな!いいなぁ!」


マズイ。

大統領の精神年齢が幼児退行していく。


「大統領も私達に混じっていけば目立ちませんよ。私達には姿を変えられる方法があるんですから」


大統領はやったぁ、と手を上げた。




***




ノラえもん一挙放送後。

大統領の下へノラえもんの家に外装に変えたい、といった要望が殺到した。

あと、けん玉とかあやとりのブームも起きた。

ノラえもんグッズが増えて、増えて増えて増えて。

元からあったノラえもん専門店の品揃えが一気に豊富に。

街がノラえもん一色。

いや、恐らく星一色。

ゼクシィじゃなくてノラえもん星にした方がしっくり来る。

あと、皆感受性が強い。


あれから、毎日ノラえもんが放映されている。

毎日大統領のノラえもん雑談があるということだ。

相変わらずガチファン。

大統領は私のガチファンでもあるので小説を網羅している。

全部暗記しているとの噂だ。

すっごいな。

私だって暗記してない。

初めて書いた小説の記憶があやふやな私ってなんか、ふふって笑っちゃう。

小説を書いたのはもう10年も前だもん。


「ノラえもん飴を輸入するから、皆も楽しみに」


放送の最後に地球からの輸入品について宣伝する。


「ノラえもんの飴って?」


「甘いんだって」


「甘いってなに?」


放送を見ていた人たちがガヤガヤと話し合う。


地球から公式にゼクシィへと輸入されたのはどら焼きだった。

私もさもありなんな選択だ。

これじゃなければなんだというのか。

おまけにどら焼きを食べる大統領のちゃんねるもあった。


「うーん!美味しい!ノラえもんが食べてたのがこれだって。地球から取り寄せたのさ!皆も食べたいと思ってノラえもん専門店で販売を開始するよ」


って。

その次の日に販売されたんだけど、専門店には沢山の人の注文が殺到。

しかし、それを予想していた大統領が大量に在庫を用意していたので事なきをえた。


その美味しさにあちこちで美味いの絶叫が聞こえた。

この日、どらやきの日になったのは言うまでもない。




***




リーシャは再び地球へ赴いていた。

大統領に来るようにと招待を受けていた。

なになに、とジャニクとアルメイ達も興味深くついてきた。

今の私達は認識阻害と体を変化させる装置を付けているので小学生くらいの地球人に見えている。

幼稚園児だと近隣の人に子供だけで集まっていることを善意で通報されるかもしれない。

決して悪いことではないけど、通報されると困るのだ。


ゼクシィから地球へと向かうのは一瞬だ。

星と星にワープを敷いている。

なので、やり取りも簡単に出来るのだが、つまりは大統領も住人も行き放題。

しかし、今のところ住人には地球へワープを規制しているのでリーシャ達と大統領プラスαの存在しか今のところ使えない。

地球の人達への配慮の為に。

いきなりポコポコ来ると混乱に陥るのは大統領も歴々の資料で知っている。

地球だけの話ではないので色々プロトコルが決められていて、大統領も色々考えているよと笑顔でウインクしていた。


呼び出された私達は、サクッと指定された地球の場所へ降り立つ。


「ここは、どこです?」


「なんもないな」


「なんもないけど、凄く存在感のある建物が……ある」


上を見ると僅かに浮遊している建物がその存在感を私達に教えている。

今の地球では出来ない、建物を浮遊させる技術力にゼクシィ大統領が思い浮かぶ。

その瞬間、建物からシュバババッと飛び出す。


「とうっ!」


とうって聞こえた。

地面に降り立つそれは見覚えのあるポーズをしていた。

姿はアニメのなんとか仮面のアニメキャラグッズ仮面を顔につけていて、ひらりとなっている真っ赤なマントをつけていた。


「大統領マン!只今、見・参!」


キュピーンと決め台詞をキメた。


(なにかに影響されたんだなぁ)


ほのぼのする。

しかし、ほのぼのした空気は私だけでジャニク達は違った。


「すっげーーー!大統領マンってなに!?」


「顔に付けているのはなんですか?ヒラヒラしているのはつけているのはなぜですか?凄く心が踊ります」


2人はキラキラした目で大統領を見る。

大統領マンはうんうんと何度も頷くとポーズを解く。


「駄菓子屋を作るにあたって付属した資料に当時の子供たちが夢中になっていたものを見て、私もやらねばと気合をいれた」


大統領もゼクシィの住人なので見た目が幼児だ。

駄菓子屋なんてどこで知ったのかな。

今の地球では知っている人も少なくなってきたと思っていたけど。

資料で知ったのか。


「駄菓子屋ってなに?」


ジャニクが聞くと、大統領は私達を駄菓子屋へ誘導されて中へ。

謎技術の如く中は外から何倍も広い。


「凄くお菓子がある。やたらノラえもんが目立つ内装になってるや」


苦笑も仕方ないくらい青色してる。

中は駄菓子屋を模したスーパーのお菓子売り場になっている。

そこにはのびのび出来るようになっていて、畳のルームも用意されていた。

和風だ。

とても良い内装になっていて、私もニッコリだ。


「凄いっ。凄いです」


アルメイが興奮気味ではしゃぐ。

なかなか見ない態度だ。


「私もこのような内装にしたいです」


既にアルメイの自室はノラえもんグッズに占領されていて、どう内装するのか。

私の部屋は意外と普通だ。

自分の書いた作品は別室だし、ノラえもんのグッズは両親が買い揃えてしまい、リーシャが買う必要がないのだ。

自他共にリーシャファンと娘を溺愛している両親にはいつも感謝している。


「これからも色々サブカルチャーが見られるから、内装については待ってた方が良いかも」


「内装についてはゼクシィ研究所に依頼して、様々なアニメに対応出来るように壁紙等を依頼している。ゼクシィ研究所に居る研究員達もノラえもんのファンが沢山居るから」


その人達を私は知っている。

何かを開発する時の監修をする時に出会ったのだが、事細かに聞いてくるのは分かるが、作者からなにもかもを聞こうとするファンの側面ががっつり出ていた。

気持ちは分かるので、対応した。

今は大忙しのはずだ。

地球からノラえもんの漫画やアニメが来たので、概念やグッズ開発のものが増えたと聞いている。

それなのに、開発させるのは大統領の力の入れ具合が分かった。

彼らは倒れないのだろうか。


「過労で大変なのでは?」


「大丈夫大丈夫。人員を増やした。ちや、かなりの人達が自分達もなにかしたいと研究所に来てくれたのだ」


なんと、ノラえもんを放送して、様々なグッズやアニメの道具を見た人達が、自分たちの道具を使いたい欲が出てきたらしい。


「歌もまたブームが再熱して、今度コンサートが開かれるよ」


「ノラえもんってそんなに主題歌ないですよ」


大統領が昔の子供の格好のまま、指を振る。


「映画版があるだろう?」


「あ、大統領映画見たの?」


「見たさ!見たに決まってるっ!」


大統領のボルテージが高くなる。

映画版はグッズとアニメの中に混ざっていて、まだ大統領ちゃんねるで放映されてない。

彼はしっかり見ていたようだ。

まあ、見ないわけないよね。

うん、分かってた。

約束された結末だ。

3人は映画版について盛り上がる。

かれこれ4時間、盛り上がっていた。

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