第9話

幼馴染達と別れてから家に入る。

両親は安全に地球訪問を終わらせたことにとても安堵していた。

それと、ノラえもんのアニメについて質問責めされた。

親という特権によりいつでも見れるようにした。

幼馴染達のテレビなどの件はアルメイが複製するらしく、不満は出ないだろう。

早速見せて見せてと言うので再生する。

2人ともはしゃいでいた。


「ノラえもんが動いてるわ」


これがアニメか、と父も周りの景色が気になるみたい。


「あら、あらあら、空き地よ!」


テンションが爆上がりしたのは空き地のシーンだ。


「まあ!空き地セットのままねっ」


皆同じシーンで同じことを言うだろう。

今からニヤニヤしてしまう。

5時間も視聴して二人は時間を知る。


「ご飯の時間ね」


「ああ、リーシャ。父さん達は気にしないからここで食べなさい」


いつもご飯を吐きそうな顔で食べていたので自主的に自室などで食べていた。

見せるのも嫌だったから。

しかし、今回は留守にしていたからか、ここで食べて欲しそうにしていた。


「お母さん!お父さん!わたしはもう皆んなとご飯が食べられるようになったんだよ!なんせ、地球食をもらったからっ」


ジャーンとレトルトカレーを手にドヤ顔する。

お供にご飯もね。

ゼクシィには料理法が違っても美味しく出来上がる機器がある。

クソまずな世界なのにそういうところ、どうなのと思っていた。

美味しくとか言われても美味しくないですが!?と文句しかなかった。

謳い文句が既に可笑しかった。


「?、なぁに?これは」


「これとこれをまずこれにセット」


調理道具にレトルトと白飯を入れる。

直ぐに出来上がるのでそれを3セット用意して2人にテーブルへ座るように言う。

ほかほかの白飯にかけられた茶色い液体に両親は恐々としていた。

ゼクシィの主食は硬いのか、柔らかいなにかだ。

液体なぞ口にしない。

だが、愛娘は両親が嫌だというわけがないと信頼しきった顔で期待に染めている。

スプーンを手に震える手をなんとか気合いで抑える。

どちらが先に毒味をするか。

いくら娘を愛していてもこれは……。


「もう我慢出来ない!カレーを我慢するなんてわたしには無理だっ」


娘は自ら毒味することにしたらしい。

ぱくんと一口にして大盛りな量を食べ出す。


「「ヒッイイ!?」」


引き攣ることしか出来ず、震えはMAX。


「んーううう!おいしー!さいこー!カレー!カレー!」


と、叫び出して等々毒が回って発作が出たのかと2人は唖然と見る。

リーシャが2人に目を向けて首を傾げるとハッと思い出す。


「あ、ごめん。なんだか変な感じになっちゃたみたいだね?これは毒でもなんでもなくて、地球の人達が食べてる国民食だから安全だよ。初めは味覚に混乱をきたすかもだけど、悪いことにはならない。私を信じて食べてみて。アルメイ達も食べて喜んでたから」


冷静に説明する娘をみて2人は顔を見合わせてから匂いを嗅ぐ。

なんというか、兎に角匂いが複雑だ。

恐る恐る、茶色い部分だけちょびっと、スプーンに乗せてペロリと舐めた。


「!!?」


「か、母さん、だ、大丈夫か?」


父は固まった母に声をかける。


「母さん」


リーシャが母の耳元で囁く。


「美味しい。それが呪文だよ」


母は思い至った。

娘は全て知っていたのだ。

極みを得て、毎日泣いたのだ。


「お」


「お?」


父が聞き返す。


「おいし、い」


やっと娘は泣かなくて良いのだ。

それがどれほど幸運なものだろう。


「リーシャ、これが……あなたの見ていたものなのね?」


「母さん。うん。私はこれを待ってたの」


「ふ、2人とも、あの?」


親子2人は残りの一人に目を向けた。


「貴方、食べて」


「えっ」


「父さん、度胸だよ」


「へ?」


父は圧に負けてちまっと口に含む。


して、父も母と同じ道を通ったわけだが、これにはまだオチがある。

3人で和気藹々とカレー談義している最中のこと。


かたんと音がして3人ともに窓に目を向けた。



男の子こと、ジャニクが窓に張り付いていて目が合った。

ホラーな光景に叫ばなかった私は友達思いナンバーワン。

口元が動いていて「ズルい、ズルい」と言っていたかもしれない。

追加でワンセット、美味しく調理機器へ投入した。

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