第9話

祥太とは高校一年生の時、出会った





高校一年生のとき、おばあちゃんが体調悪くなって、K市のおばあちゃんの家に家族で身を寄せた





今までは和田バレエ団の本部に通っていたがK市にも支部ができたばかりで、そこへ通うことにした





母はぶつぶつ身を寄せることに文句を言っていたが、どこであろうが彩子先生は週に一度レッスンを見てくださるから、私はK市の支部でもいいと思っていた




高校はK市の公立に入学したが知らない子ばかりなのと、地元民同士、輪が出来上がっていて、入り込めなかった




さらには最初の交流キャンプはコンクールと被ったので欠席したため、さらに輪に入るきっかけはなくなった




でもいつも母は言っていた




「普通の子と遊ぶ暇があるなら、練習しなさい」と




私とこの子達とでは住む世界が違うと思っていた




私に才能があるとかではなく




私には自由はないけど、この子達は自由だ





そういう意味で、違う世界の住民なんだと思っていた





だから毎日、ひとりで屋上で次にコンクールで踊る曲を聴きながらお弁当を食べていた





『長谷川さん!』





私は1回目の祥太の声に気がつかなかった





『長谷川さんってば!』






祥太は私のイヤホンを耳から無理矢理外した





『あ、は、はい。なんでしょう』





驚いて、反応に困る





『何してるの?』





『え、ご、ごはん、食べてます』





『なんで教室で食べないの?』





『1人でぼーっとしていたいから』





『1人が好きなの?』





『違うけど、私、地元がこっちの人じゃないから輪に入りづらくて、交流キャンプもコンクールで行けなかったし』




『コンクール?』




『ば、バレエやってるの』





『踊るバレエ?コンクール出るってことはうまいんだ?』






『さぁ、どうなんだろう』






『みんながさ、長谷川さんのこと、気になってるんだ。いつも1人でいるからって。


もし、きっかけ失ってるだけならさ、話しかけてみればいいと思う!』




『.....いいよ、そんなの』




『なんで?』




母親の呪縛のような言葉もあり、積極的に友達を作ろうと思えなかった




『とにかく、ほっといてよ』





私は、食べ終わったお弁当箱を閉めて、その場を後にした





お弁当もみんなみたいに可愛い装飾や、美味しい卵焼きが入っているわけじゃない




玄米で作った低カロリーな食事が少し詰められたお弁当だ




一緒に食べたらそれこそ比較して落ち込んでしまう




1人でいい




私は1人の方がいいんだ





そう自分に思い込ませていた

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