第7話

その日は雅人と不動産屋に行くことになっていた

雅人は事前に何件か候補の物件をメッセージアプリで送ってくれていた




雅人は家まで迎えに来てくれた





車で予約した不動産屋さんへ向かう

この地域では名の知れた不動産屋で、名前くらいは聞いたことがあった





「雅人、いろいろありがとう。物件見ててビックリしちゃった。私の教室に近いところを選んでくれたのね。家賃相場高いって言われてる路線なのに」





「俺もこのあたりだと、新幹線に乗りに行きやすいし、自分のスタジオも行きやすいから」





スタジオは地下鉄では行かないのに、そう言ってくれる雅人は本当に優しい






この優しさに甘えてばかりで良いのだろうか






そんなモヤモヤに襲われる





店を尋ねると、女の子が出てきた





「予約してた伊勢ですけど」





「お待ちしておりました。こちらにかけてお待ちください」





椅子に座り、しばらく待つと、さっきの女の子がお茶を持ってきた





そして、営業の人が資料の束を持って現れたので、一度二人で立ち上がる





「ご来店ありがとうございます。営業の平山です。よろしくお願いします」





「伊勢です。よろしくお願いいたします」





平山........





渡された名刺を見て、目を疑った





祥太......






まさか、こんな偶然があるものか






そう思った






祥太も、気がついたようだ、一瞬フリーズしたように自分を見た





「真穂?」





雅人に声をかけられ、ハッとした






「あ、ごめん」




「大丈夫?」




「うん」





そのやりとりを祥太も見ていたが、何も言ってこなかった





「大丈夫ですか」




「は、ハイ」




「じゃあ、さっそく、お問い合わせいただいた物件をご紹介しますね」




「お願いします」




「こちらの物件は、ちょっと駅から遠いんですが、お車とかって...」



「あ、僕だけですね」




「あーそうですか。近くにスーパーもないので、車じゃないとあまり生活便が良い方じゃないです」





「そうなんだ。真穂、大変だね。ここじゃ」





祥太が本当に祥太なのかが気になって、あまり、話なんか聞けなかった





雅人と祥太は、盛り上がって話をしていて、いつのまにか案内してもらう流れになっていた

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