第二話 人形 1

第6話

雅人からのプロポーズの夜に、昔の夢を見た





コンクールのようだ、舞台の袖にいて、出番を待つ





自分の番号が呼ばれて、音楽が先に鳴り、舞台に出る





最初のジャンプをして登場の決めポーズを決める





このコンクールでも、結果を残さなくちゃ......





あの重たいものを背負いながら踊っていた頃の自分だった





彩子先生に言われた注意を思い出しながら、一つ一つの動きをこなしていく





舞台そでからの視線を感じながら、私は踊った





最後のイタリアンフェッテ、全て決めないと!





足を高く振り上げ、身体の向きを変えようとした瞬間、軸足が滑った





音だけが鳴り続け





視界には舞台の床






私は転んで手をついてしまったのだ





クラシックバレエで床に手をつくことはありえない





完全なるミスだった





すぐに立ち上がり、音の途中から踊り始めた






舞台をピケターンで一周して、ラストポーズを決めた






コンクールでは拍手は起きない






あの日は彩子先生が付き添えなかったから、お母さんがいたのだ






あの、般若のような顔を見た瞬間、







目が覚めた






朝の鳥の鳴き声を聴いて、夢だったことに気がついた






今年の演目がコッペリアだからだろうか






あの悪夢のコンクールの夢を見るなんて...






もう、人形だった頃を思い出したくないのに

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