第3話

レッスンが終わり、みんなクールダウンしながらおしゃべりをする




一日のうちの最後のレッスンなので、次のクラスもないし、雑談はいつも盛り上がる





「真穂センセー、今日ひょっとしてこれからデート?」





アカリがニヤニヤしながら言ってきた




「え?なんで?」




「いつもと化粧が違うな、って」





「あぁ、まぁ、鋭いなあ、みんなは。今日は記念日だから、って、レストランに連れてってくれるみたいなの」





「素敵ー!いいなぁ」






カリンはその間も、一人で今日のレッスンでやったアンシェヌマン(複雑な動きを組み合わせた踊り)を何度も復習していた






「小川バレエスタジオの星、いやいや今やいろんなバレエ団に客演で引っ張りだこだもんね。先生の彼氏」





「辞めて辞めて。恥ずかしいから」





「いいなぁ。イケメンだし、マジで王子様。先生と踊ってるとこ、一度でいいから見たいよぅ」





「同じ留学先だったんでしょ?向こうではあるんですか?」





「留学先は違ったけど、入ったバレエ団が一緒だった。でも組んだことはないの」






そのとき、真穂の脳裏に雨の日のあの、風景がフラッシュバックした





赤い傘が飛んでいった残像が頭に蘇った





私は一瞬のフラッシュバックによろめいた





「先生?」




ユカが心配して近づいてきてくれた





「あ、ごめんね。ちょっとね、疲れてるのかな。あ、もうこんな時間。みんな、遅くならないように、帰ろっか」





「カリン、そろそろ自主練終わりなよ」





サユキが声をかけると、カリンは頷いた





私は講師更衣室に入り、息を整えた





あの日のことは思い出したくないのに





今年の演目がコッペリアだなんて...





そう考えながら、着替えた





そして、帰っていく生徒たちを見送った

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