第10話
その日の夜ご飯の時間は、志穂の愚痴大会だった
「なんなのアイツ!人生であんなにムカつく人間に会ったの初めてだよ!」
「へぇ、転校先にそんな奴いたんだ」
玲蘭と伊織が作ったシチューを食べながら、志穂は苛立ちを露わにする
「わたしは将来社長になる人間だから、仲良くしておいた方がいいわよ、だって!ばっかみたいで」
「そんな子がいるの?なんか漫画みたいね...」
玲蘭も失笑してしまった
「まぁ、実際?他の子が言うに、成績もいいし、運動神経も抜群で。だから、みんなは逆らってないみたい。
かなりお金持ちで、親もPTA会長らしいし?
あの3丁目の角の大きなおうちに住んでるって」
「.....志穂、それって、
「え!何で知ってるの?そう、猿林洋子」
「やっぱりな...相変わらずなんだな、ろこちゃん」
玲蘭は状況がわからずキョロキョロする
「洋一の妹だよ」
「あ、朝言ってた...」
「洋一と違って、昔からすごい出来がいいから親がもてはやして育てたらしくてすげー自信過剰なんだよ。
洋一は家継ぎたくないから、妹がその気ならって放置してるらしいけど」
「そうなんだ...」
「でも、あんまりその性格じゃこの先苦労すんじゃねーかって言ってんだけどさ。でも、ろこちゃん、クラスではじけにされてるわけじゃないんだな」
「弾けにはされてないよ。取り巻きもなんか変な奴らだし、私は...理解不能。なんなんだろって感じ」
「じゃあ、志穂、転校初日は上手くいかなかったの?」
「そんなことないよ。友達も別のグループでできたし、お姉ちゃんは?友達できた?」
「うん、できたし、いろいろ出会いがあったよ。あ、そうだ、親戚の子...バンドやってる」
「奈菜美か。そうだな、志穂にも話しておかないとな
この前会った、なつみさんの子供が同い年でさ、この前の集まりには来ていなかったんだけど...奈菜美っていうんだ。俺らの親戚な」
「へー?その子も春央学院なの?」
「おう!びっくりしたよ。あいつ、勉強は苦手だったはずなんだけど、受験頑張ったんだな。てっきり、近所の公立に行くんだと思ってたよ」
「家、遠くなの?」
「うーん、確かに春央から近くはないな」
「お兄ちゃんを追ってきたんじゃない?」
「まさか、うちと同じ理由じゃないかな。学力にばらつきがあってもみんな通える学校にしたんじゃないか?だってあのギターの寺崎ってすげー頭良くて、すでにフランス語、英語、ドイツ語が話せるって話しだぜ?」
「マルチリンガル!?」
「そうなんだよ。だからさ、realizeの歌詞、三ヶ国語が入ってておしゃれなんだよな...音もキーボード入るから多彩だし」
「すごい人なんだね。寺崎くん」
「まぁ、親父が議員かなんかで、小さい頃から英才教育受けてるらしいからな。なんで春央なんか来てるのか知らねーけど...」
「ひょっとして寺崎くんのこと苦手なの?伊織」
「おう、何考えてるかわからないから、好きじゃないな。奈菜美のバンドのライブも正直あんまり行きたくなくて」
「そうなの?なんで?」
「行ったらわかるよ...」
「えーなになに、なんの話ー?ライブ行くの?」
志穂は話に入れずに怒ってしまった
玲蘭は首を傾げる
伊織はため息をついて、またご飯を食べ始めた
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