第6話

教室に2人が入ると、ひとりの男子生徒が2人に向かって歩いてきた




「やぁ、同じ学校だったんだね」


「よろしくな」


「そちらの首席さんは、例の妹さん?」


「あぁ」


「よろしくね。寺崎優吾です。realizeでギター弾いてます」


「はい。よろしくお願いいたします」


「可愛いね」


「え?あ、あの...」






「はーい、席について」






担任がやって来たから、慌てて席に座る3人





玲蘭と伊織は名簿順のため、前後の席だった






玲蘭はさっきの寺崎への伊織の態度がどうもよそよそしいのが気になった





(なんで苦手なんだろう、いい人そうなのに...)





レクリエーションが終わり、帰宅の時間になった





貰った教科書をロッカーに入れようとしたとき、後ろの席の女の子が全部床に落としてしまった




「大丈夫?」




玲蘭は拾ってその女の子に渡した





「ありがと...」





肩より上の髪の毛に、くりくりした目の女の子は玲蘭を見た




「あ、首席の...」




「辞めて辞めて、恥ずかしいから、それ言うの。朝比奈玲蘭です」




「玲蘭ちゃん。綺麗な名前...」




「お名前は?」




「植村美咲」




「美咲ちゃん、よろしく!」




「はい、よろしくお願いいたします」




「け、敬語...?」




「あ、人見知りで...でも、ありがとう、話しかけてくれて...」




「うん。前後ろだから、仲良くしようよ」




「はい」




「また、敬語...」




「ごめんなさい」




「まぁ、徐々に敬語もやめよう」




「玲蘭ー。帰ろうぜ?」




伊織が覗きこんできた




「あ、伊織。うん、ちょっと待って」




「知り合い?」




「うん、今友達になったの」




「植村美咲です」




「朝比奈伊織っす」




「苗字...同じ...双子?」




「うん。兄と妹だけど、双子じゃないんだ」




「あぁ、そういうことか。うちの中学も双子いて、どっちもこの学校に進学したから、てっきり双子かと思っちゃった」



「ふーん」




「ほら、あの子。本郷さん。お兄ちゃんが確か普通科なの」




美咲の指さす先に真っ黒い髪に、ストレートのロングヘアの女の子がいた




「本郷...」




「お兄ちゃんのほうはバンドやっててね、結構人気なんだって」




「本郷って、本郷樹ほんごういつきか?」




「え、知ってるんですか?」



「知ってるの?伊織」



「奈菜美のバンドのベースだよ!双子いたんだ...」



「あ、そうそう、尾崎さんのバンド。知り合いなんだ」



「今日知ったんだけど、尾崎さんと私たち、従兄弟らしいのよね」



「へー、世間、狭いですね」



「しかも、伊織もバンドやってるの」



「そうなんだ、じゃあ、ライバルだね。realise、中学から凄い人気だったんだ。ちなみに私もファンで...」



「へぇ、これからいろいろ教えてね」




「はい。よろしくお願いいたします」




「また敬語...」




「あ...」





美咲と玲蘭は一緒に笑った





新しい環境での一日目、新しい出会いがあった

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