第21話 水森の運命
なんだかんだあって気づいたら中間テスト3日前になっていた。
どうしてこんなにも早く来るのだろうか? 気分があまりのらない俺の目の前には、今朝廊下を思いっきり走って叱られていたあの「あんぽんたん」がいるという事実でさらに気分がのらなくなる。
「......なんだよ」
「先輩、勉強教え欲しいっす!!!」
あんぽんたん......いや、一応水森と言っておくか、水森が俺にそう頼む。
しかし、俺は━━━━━━
「いや、やだよ?」
━━━━━━バッサリ切った。
一見ただの薄情なひどい先輩のように見えるだろう。だが、こいつが「一学期総合成績1位」だったとしたら、それは話が変わってくるだろう。
「教えることないの、わかるだろ」
「助けてください! 先輩!!! 今回はマジで無理なんです!!!」
「中学ん時もそう言って1位取ってたよな!?」
「いや、それは先輩のおかげですよ!!!」
「おめぇ『先輩が教えたところぉ、全く出なかったですよぉwww』って言ってただろうが!!!」
「過去は過去!!! 今は今ですよ!!!」
こいつに1回教えた1件で、俺はもうこいつに何も教えないことを誓った。それに、まだまだ木滝さんと間宮さんにスパルタ教育(?)しないといけないのだ。
.....埒が明かないのでトドメの一撃をさっさとこいつに食らわせることにしよう。
「今なら引き返せるぞ?」
「いいえ、引き返しません。先輩に教えて貰って1位を取って先輩の家であんなことやこんなk━━━━━━」
「なあ龍希、水森がスパルタ教育志望するらしい」
その一言を聞いた水森は......固まった。
まるで生きたまま凍らされたかのように動かなくなってしまった。
「水森が......か......しょうがないな」
「おう、中学2の時の教え方で多分大丈夫だから」
......と、ここで凍ってしまったはずの水森が動き出しているのに気づく。
「なぁ? 水森」
「八.......八葉矢先輩......???」
「今日の放課後、楽しみだな?」
「あの......あ! 用事が出来たんで、そのぉ......? 失礼します? というかなんというか?」
「ダメ」
「いやああああぁぁぁぁぁぁああああ!!!!!」
水森の必死な悲鳴は、先生を呼び出すことになり、水森は今朝同様に怒られるのだった。
ちなみに、俺が中学2年の体調不良で休んだ時に、龍希が水森にやらせた勉強は、休憩無しで問題を解かせまくることだけだったらしい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます