第20話 謎の木滝さん

一応説明しておこう。


木滝さんが土日を費やして頑張った数学は、テスト最終日......つまり、10月20日の水曜日にテストがある。なので━━━━━━


「木滝さん、その内容を他の勉強しながら覚え続けられたりは......?」


「......あははぁ......」


うん、考えてなかったねこれ。


「そんなぁ、頑張ってまだやってない範囲とかもやったのにぃ......」


偉い、偉いんだよ、木滝さん。でも、やる順番が違うんだ!


「まぁ、やっただけ偉いからさ......」


全く効果なさそうなフォローをする俺。


そんな俺を少し見て、木滝さんは笑った。


「優しいね?」


実際、今のが優しいかどうかは俺には分からないが、まぁいいだろう。


「......真波くん」


「ん?どうかした?」


一瞬言うか迷った感じに見えたが、木滝さんは━━━━━━


「ねぇ、好きな人とかいるの?」


......え? なに急に? どうした!?


「どうしたの? 急に......」


急に......しかも、めちゃくちゃ予想もしない質問が投げかけられ、さすがに驚いてしまう。


「いやぁ......何となく?」


そう言う木滝さん。


「あ、いやぁ、夕日が綺麗だなぁ......」


おい、俺よ、一言申す。話そらすの下手すぎだろ!!!


どう答えていいか分からないし、いきなりなこともあったので、苦し紛れで話をそらした。


「......」


不満気にこちらを見る木滝さん。


「好きな人......いないんだ?」


話をそらしても戻しに来た木滝さん。


もう答えるしかないので俺は━━━━━


「いないよ、女子と接点ほぼないし」


━━━━━一応本音だし、本当なのだが......言ってて悲しくなった。泣きたい。


俺の回答を聞いた木滝さんは、何故か嬉しそうな顔をしているし......


しばらくして、先生が教室を使うとのことで追い出された俺たちは、俺の心が少し傷ついた形で今日の勉強会の幕を下ろした。





━━━━━いないよ━━━━━


そう聞いて、私は失礼ながらも嬉しさが湧いてでた。


理由は......一つは正直少しの人にはバレてるとは思うけどあえて(?)言わないでおこう!


もう一つは......後輩の水森夏季ちゃんの存在。


実は、現役の時に何回か見たことがあったので、正直同じ学校にいたことにも驚いたけど、それ以上に真波くんと仲が良かったのにビックリした。


もしかしたら......なんてことも考えてたから。


けど、付き合ってるとか、そういうのじゃなさそうだからよかった。


いや、よくないかも......夏季ちゃんもきっと、私と同じ気がするから......

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