第19話 勉強は、偏らせずに......
「海斗、すまん。今日用事が入った」
月曜日、登校して早々龍希にそう告げられる。
「勉強会のことか?」
「そうだけど、お前一人に黙って任せるのは申し訳ないしな」
そう言って龍希は手に持っていたスマホの画面を俺に向ける。メッセージアプリのようだが、その内容は━━━━━━━
「バイトのシフト、結構ヤバいらしいからさ、入って金がっぽり稼ぐ」
「いや言い方よ......」
いつも龍希は土曜日に入るらしいが、今週は本当にヤバいらしく、文化祭の日のシフトが今日に入った形になったそうだ。
「ってことで、木滝と間宮のことどうにか頑張れよ?」
「いやぁ、厳しいなぁ......」
そんな会話をしていると、龍希の肩を叩く人が━━━━━
「八葉矢、真波今日私ちょっと約束が出来てしまいましてぇ......」
「つまり、間宮さんも来れないと?」
「まぁ、そうなるね」
つまり、今日は俺と木滝さんの2人きりでの勉強になるようだ。なんか、緊張するがそうなってしまったのなら仕方ない。
「わかったよ、じゃあ今日は木滝さんと勉強するよ」
「悪いな、まぁできる限りの事はするからさ」
そう言って、龍希と間宮さんは去っていった。
「......2人きりかぁ......」
俺、木滝さんとしっかり話せるのだろうか......?
□
放課後、一気に人がいなくなった教室に残った俺と木滝さんは、テスト対策を進めていた。
土日、どれだけやったかは分からないが、金曜日にできていなかったところが、ところどころ解けるようになっていたのは正直想定外だった。
「意外と出来るようになってるじゃん」
「私、出来る女なんで」
前回テスト278位(328人中)の自称「出来る女」がドヤ顔でこっちを見ている。
いやまぁ、よくできてるけども。
でも、俺は思った。
俺が見ている限りでは、木滝さんは数学しかやっていない。そして、土日が過ぎた月曜日に、出来ていなかった問題が出来るようになっていた。
......もしかしてだが......?
「もしかしてだけど木滝さん? あなた、数学しかやってないとかある?」
俺がそう問うと、木滝さんは不思議そうな顔で━━━━━━━
「え? そうだけど」
━━━━━━━と答えた。
オワッタ......
死んだような顔をしているであろう俺の顔を見て、まだ木滝さんはよく分かっていないような顔をしているのだった。
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