第29話 ウルベノム・アレイン・オードル
ナザリック地下大墳墓。第十階層。玉座の間。
今ここには、玉座の間を埋め尽くすほどの異形の者たちがひしめき合っている。
守護者統括のアルベドは、最大限の集まりを見せる異形の集団を見て、モモンガにゆっくりと呟く。
「モモンガ様…。現在ナザリックにおけるほぼ全ての者たちが集まりました」
「うむ…アルベドよ、ご苦労」
「もったいないお言葉…では皆、モモンガ様に忠誠の儀…」
「よい、今はその時間すらもったいない」
モモンガはもはや恒例となっている忠誠の儀を省略するよう求める。
「も、申し訳ございません。モモンガ様」
「よい、お前の全てを許そう、アルベド」
「はっ!」
アルベドの謝罪を、モモンガは支配者たる様相で受け入れる。
「モモンガ様…。発言のご許可を頂きたく存じます」
「うむ…デミウルゴスよ、申して見よ」
「忠誠の儀を行われない程に時間の余裕がないと仰られましたが、このナザリックが転移したこととは別に、何か問題が発生したということでしょうか?」
デミウルゴスは、真剣な眼差しをモモンガに向ける。
「それは…少し違うな…。というよりも、むしろ喜ばしいことなのだ」
「そ、それはいったいどのような…」
「うむ…結論から言おう…」
モモンガは一呼吸置くと、意を決したように口を開いた。
「我が友…いや、至高の41人の友である、ウルベノムさんが我らと同じくこの異世界に転移し、このナザリックへ訪れることになった!」
モモンガの言葉に、アルベドやデミウルゴスを始め、多くのものが感嘆に似た声と表情を見せる。
どうやら、ウルベノムさんを知ってはいる様子であった。
だが、一人だけ、他の守護者やNPCたちとは比較にならない程の動揺を見せている者がいた。
「ウ、ウルベノム様とは…もしやウルベノム・アレイン・オードル様のことでございますか!?」
ウルベノムさんの正式名称を、デミウルゴスは大声で呼称する。
その本名を聞き、多くのものが何かに気付いたように大きく目を見開く。
「その通りだ、デミウルゴスよ。ウルベノム・アレイン・オードルさんだ。お前を創造したウルベルト・アレイン・オードルさんの実の兄だ」
「おお、なんという…」
デミウルゴスは、身を震わせながら、小さく口を開く。
他の守護者たちも、驚きと感動に身を震わせている。
ウルベノムとウルベルトが実の兄弟だと知らなかったものは驚きを、知っていたものは感動を心に宿している。
「そこでだ…お前たちに聞きたいことがある」
「聞きたいこととは、いったい何でしょうか?」
モモンガの言葉に、アルベドが静かに口を開く。
「…お前たちは、ウルベノムさんのことをどこまで知っている?」
「そ、それは一体どういった意味でしょうか?」
アルベドはモモンガの質問の意図が分からず、聞き返して見せた。
「そのままの意味だ…。お前たちが知っているウルベノムさんの情報を、私に話して見せろ。場合によっては、伝えなくてはならないことがある…。そうだな…。まずはアルベドとデミウルゴスから聞こうか」
「承知いたしました。…では僭越ながら私から…」
モモンガの要求に、守護者統括としてアルベドが率先してそれに答える。
「…ウルベノム・アレイン・オードル様。至高の41人のお一人であられる、ウルベルト・アレイン・オードル様の実のお兄様であられます。ギルド百花繚乱の副ギルド長をおつとめになられております。また、所属されていたギルドは違えど、多くのアインズ・ウール・ゴウン至高の41人の御方々と友好的な関係を築いているお方であらせられます」
「…うむ。その通りだ…アルベドよ」
モモンガの肯定が入ったところで、玉座の間がまたも感嘆の声と雰囲気に包まれる。
「さて、次はデミウルゴスだ。ああ、アルベドが言ったことに関しては、わざわざもう一度言う必要はないぞ」
モモンガは何度も同じことを聞くのは時間の無駄だとばかりに牽制する。
「承知いたしました。アルベドの発した言葉以外で、ということですと、ウルベノム・アレイン・オードル様の種族は人間でございます。しかし、人間とは思えないほどの驚異的な実力を持ち、ワールドチャンピオンのクラスを取得されております。さらに、至高の41人の御方々の中で最強の力をお持ちのたっち・みー様を以てしても勝てないと言わしめる御方でございます。」
「その通りだ、デミウルゴス」
またも玉座の間に驚きの雰囲気が醸し出される。
「そうだな…ほかに何か知っている者はいるか?」
モモンガが問いかけると、セバスがそれに答える。
「モモンガ様」
「セバスか、申して見よ」
「はい。ウルベノム・アレイン・オードル様は、私の創造主であるたっち・みー様と同じく、聖騎士としてご活躍されてだけでなく、正義を重んじられている方であります。また、モモンガ様を始め、多くの至高の41人の御方々から、アインズ・ウール・ゴウンへの加入を勧められていたお方でございます」
「うむ、全くその通りだ。私個人としては、今でもウルベノムさんには我らがアインズ・ウール・ゴウンに移籍してもらいたいと思っているくらいだ」
もう何度目かわからないほどに、驚きが玉座の間を包み込む。
「さて、他に知っている者は?」
玉座の間に静寂が流れる。
どうやらこれ以上の情報を持つNPCはいないようであった。
「そうか…なるほど、よくわかった」
モモンガはそう呟くと、ゆっくりと立ち上がり、再度口を開く。
「今の情報では…ウルベノムさんを語るには非常に不十分である」
モモンガは不服と言った様子で、守護者たちを見つめる。
その雰囲気にいち早く気づいたアルベドは、直ちに膝を着き、頭を垂れた。
「御身のご期待に応えることができず、大変申し訳ございません!必要とあらば、私以下、全てのものに罰を!!」
「よい…お前たちが知らぬのも無理はない…謝罪は不要だ」
「…寛大なお心、感謝申し上げます」
モモンガは、アルベドを見つめた後、ゆっくりと視線を前に移す。
多くの守護者やNPCが頭を垂れて平伏している。
「よかろう。では知るがいい!至高の41人の友である、ウルベノムさんの…その全てを!!!」
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