第33話
その夜は、あまり眠れなかった。
でも、葛馬はぐっすり眠っているっぽい。
私は、ずっと疑問だった。
なぜ、私が柏樹先輩の話をしたときに焦るかのような顔をしたのか。
柏樹先輩と知り合いとか?、もしくは親戚とか?
とあれこれ考えているうちに眠りに入っていた。
朝起きると、そこには葛馬さんがいなかった。
私は、起き上がって上着を着る。
寝室から出ようとしたとき葛馬が電話をしているのが聞こえた。
内容も聞こえてしまった。
「父さん、琴葉が昔の俺のことを知ってるんだけどどういうこと?」
その時の葛馬の顔には必死さがあった。
『ああ、気づかれてしまっては仕方がない。実はな、母さんからの頼みだったんだ』
「母さんからの頼み?」
「それはどういうことなの?母さんの頼みって,,,,」
『母さんが死ぬ前に、お前が安心して
生きていける
「だからって、なんで琴葉なんだ?」
『母さんがお前の初恋だっていつも言っていたからだが?』
『もしかして、気づいてなかったのか?』
「気づいては居たけど、まさか本当にそうとは思わなかったから‥‥‥」
『まぁ、でもちゃんと言わなかった私の責任でもある。もし、結婚したくないなら断っておく』
私は、目の前がぐらついた。
なんとか踏ん張っていた足もみるみる力が抜けて
その場で座り込んでしまった。
葛馬が柏樹先輩ということに驚いたが、
そんなことよりも葛馬と分かれることになるかもしれないということが
悲しくもあったし、衝撃でもあった。
けれど、葛馬のある一言でそんな気持ちも一気に消え失せた。
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