第31話

たしかに、今まで私だけさん付けで


本当は呼び捨てで呼んでほしいんじゃないかって


一度は思ったことがあった。


でも、もしも分かれるかもしれないなら


そこまでしたくないという人だったらと思ったら、


どうしても言い出せなかった。


だから、私はほぼ迷いもなく直ぐに返事をした。



「いいですよ?私も”葛馬さん”じゃなくて”葛馬”って、呼びたかったので」



そう告げると更に表情が明るくなった。



「あと、一つって行ったのにごめん」


「敬語もなしにしない?なんか堅苦しい気がするんだよ」



葛馬が申し訳無さそうに言うのを見て少し渡ってしまった。


これも、別に構わなかったのですぐに返事をした。



「いいよ。やっぱり、少し堅苦しいもんね」



すると、葛馬は少しはにかんだ。

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