第19話

「じゃあ、行きましょうか?」



少し疑問形に私が聞くと、葛馬さんは、


満面の笑みで『はい!』と答えた。



入るとそこにはたくさんのお店があった。


雑貨屋、洋服屋、ジュエリーショップ、本屋、飲食店


私は、こういうところにはあまり近づかないようにしていた。


なぜなら、若い高校生のカップルを見ると何故か虚しくなるから。


どうしても想像してしまう、今そこに立って新作のスムージーを飲んでいる


カップルがもし、私と柏樹先輩だったらって。


でも、そんなことを思ったって、余計に虚しいし、余計に悲しいだけ。


そんな事分かっているのに、この場に来ると必ず考えてしまう。


だから、来ないようにしていた。


けれど、今はそうは行かない。




もし此処で、私が『嫌だ』と言ってしまえば、結婚の話はなくなってしまう。


そうなると、母さんにも父さんにも迷惑と心配をかけることになる。


そう。此処で私が我慢をすれば誰も悲しまないで済む。




私は、自分にそう言い聞かせて葛馬さんに微笑む。

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