第34話

正直言って、鬼塚は、引っかかると思っていた。


でも、想定内でもあった。

なんたってあの”狂狼”なのだから


でも、また似たようなことになるとは思っていなかった。

以前も、このようにして腕をつかまれた。



「もう、いっそのこと私を殺してくれません?」


「なぜだ」


「そんなのあなたを殺せないからですよ」


「あなたを殺せないのなら必要のない人間なので」


「それは、できないな」


「なぜです?」


「それは、俺が灑華のことが好きだからだ」


「冗談やめてください。あなたと私は、敵なんですよ?」


「‥‥‥‥‥そうだったな」



鬼塚は、そう言って私の腕を離した。


私は、ナイフを広いカバンを持った。

そのまま出ていこうとしたら



「灑華待て、」


「何でしょうか?」


「送っていく」


「そんなこと言って、私、その間に殺すかもしれませんよ?」


「俺は、灑華がそんな卑怯なことしないって分かっている」



鬼塚は、そう言って私の腕を掴んだ。

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