第30話

鬼塚は、眠っていた。


それもやつれた表情をして、眉間にシワをお寄せながら。

居るのは全く不思議ではないのだが

めったにこの部屋に居ないので私は、結構驚いた。


「鬼塚さん!起きてください!」


全く起きない,,,,

はぁ、なんで起きないのこの生き物は,,,



「灑華,,,ごめん」



「えっ,,,,」


思わず声が出てしまった。

謝るという感情を母親のお腹の中に置いてきたと

言っていた鬼塚が寝言だが『ごめん』と言ったのだ。



「いつも、迷惑かけて,,,,ごめん」



寝言だとしても誤ってもらえたのは嬉しかった。

けれど、なんというかまるで_____



「どこにも行かないで,,,,,,,,?」



バカップルが喧嘩したときの彼氏が寝言で言ってた

というようなありきたりなシチュエーションに少しだけゾッとした。

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