第10話
私は、階段を降りていく。
広間から、香ばしい匂いがする。
今日のメニューは、オリーブが入っているみたい。
広間につくとそこには、
スクランブルドエッグにコーンスープ、ふわふわのパン、
ベーコン、シーザーサラダ、見ているだけでヨダレが出そうなものばかり。
もうこんな朝食も食べられないのか。
みんなでこんな美味しそうなものを
これからも、食べれないと思うと哀しくて仕方がなかった。
みんな席についたことを確認する。
『いただきます』
意図的なのか偶然なのかわからないほどきれいにみんなで揃って
いただきますと言えた。
私は、実感をする。
ああ、今多分この世界で一番幸せだ。って。
あっという間に時間は過ぎていき、気がついたらもう出発の時間が迫っていた。
幸せを噛み締めつつも、手放して、席を立つ。
やっぱりみんな、少し暗かった。
中には、きっと必死に泣くのを堪えているやつも居たと思う。
例えば、親父とか虎汰朗とか。
私は、気を取り直して部屋へと戻る。
荷物を持つ。
荷物を玄関において広間の奥においてある
心のなかでこう喋りかける。
わたしは、まあ知ってるかもしれないけど
これから、
依頼人が私にやって欲しいんだって
いや、正確には私じゃなくてもうひとりの私の
”
ほんとに運ないよね私。
せっかくこの命を助けてくれたのにごめんなさい。
もしかしたら、そっちに行くかもしれない。
でも、行くつもり無いんだ。まだ生きていたいから。
私は、返事するはずのない
スクっと立って、声に出して言う。
『行ってきます』
気のせいかもしれないが、
『行ってらっしゃい』
と言ってくれた気がした。
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