第11話

私は、身だしなみを整えて靴を履き始める。

履き終えて、立ったその時だった。


「灑華、体に気をつけろよ。お前は、俺ら組の自慢だ」


「行ってらっしゃい」


親父がそういった。


「はい、行ってきます」


私は、そう言うと家を後にして車へ乗り込んだ。




車の中では、30分ほど会話がなく静まり返っていた。

運転してくれている虎汰朗はずっとソワソワしている。

きっとなにか言いたいのだろうか。

私は思わず聞く


「どうしたの?そんなにソワソワして,,,」


「いや,,,,,,いざとなると何を話したらいいのかわからなくてさ」


「姉貴、一人で全部片付けるつもりなの?」


「そうだよ。他に誰がやれって?」


「‥‥‥‥‥‥そう、だな」


「姉貴がそう言うならそれでいいけど、体には気をつけてほしい」


虎汰朗が親父と同じことをいう。

私は、虎汰朗の言葉を聞いて、

やっぱり本物の親子は違うなあ。そう思った。



私達は、再び無言になる。

無言なまま気がついたら、ホテルへと到着した。


ロビーで鍵を受け取り、

部屋へ行く。

虎汰朗の話によると、依頼人が取ってくれたらしい。


部屋についたら、鍵が空いていた。

一度部屋を間違えたのではと思いドアを閉め、

部屋番号を見る_______間違っていない。

もう一度開けるとそこには、依頼人が立っていた。

依頼人は、若い女性だった。


「あら、いらしたのね?”狂犬”さん♡」


妙な感じもしたが、私は気にせず中へと入る。

すると、依頼人がソファに座った。私も彼女に続いて座る。


「じゃあ、本題に入りましょうか」


別人化のように冷たい声で彼女はそういった。


「私は、依頼人の西宮白那にしみやはくなよ」


彼女は、西宮白那にしみやはくなと名乗った。

恐らく、見た目からして西宮財閥のお嬢さんというところか。


白那はくなって呼んで頂戴」


「わかりました。では、私のことも”狂犬”と呼んでください」


「ええ、もちろん。では、まず確認するわね?」


「今回の依頼は、鬼塚建設の次期社長の鬼塚龍介おにつかりゅうすけ。彼を殺してちょうだい」


「殺してもらいたい理由を教えないのだめなんだっけ?」


「‥‥‥‥‥‥はい」


聞いても無駄だってわかっているけど、聞くことによってえっれることもある。

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