第8話 青天の霹靂

 綾乃がドMだと気づいたのはいつだっただろう。ドSということはさすがに無いとは思っていたが。肌を合わせてみて確信した綾乃の被虐志向に、亮介は揺さぶりをかけてみたのだった。


(さぁ、どう出る?)


 その心情を読んだのかどうかはわからない。綾乃は応えてくれた。一樹がその様子をどう見たかは想像がつく。さっきから綾乃の名を呼ぶ声がそれを証明している。


 頼まれて始まったこの寝取りプレイだったが、もう既に二人にとっては十分な刺激になったように思える。一方で自分にとっても、以前から女性として魅力を感じていた綾乃を好きにさせてもらえるという、最高にラッキーな夜になった。親友の妻という足枷あしかせは大きく、壁は高い。妄想はしたことがあっても実行に移すつもりなんて毛頭なかった。だから、この夢のようなひとときを、そしてその喜びを亮介は噛み締めていた。



 ◆


 

 奉仕する悦びというものもあるんだ――。それを教えてくれたのは亮介であり、夫ではなかった。


(なんて気持ちいいんだろう――)


 一樹を忘却の彼方に置き去りにした綾乃は、この心地よさに酔いしれていた。


 脳内にはウユニ塩湖のような、周囲に構造物何1つない世界が広がる。

自分以外誰もいない、そんな大きな、見渡す限りの青と白のコントラスト。


さっき目を開けたのはいつだったっけ――?


それほどの恍惚こうこつ

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