第20話:隼人君、吉岡君ちと悠生君ちを訪ねる。

隼人君の心無い言葉に出て行こうとしたワイン。

隼人君の情けない説得で、出て行くことだけは留まった。


だけど以前のように素直にはなれない隼人君だった。

わずかないさかいはあったが、ふたりはなんとか均衡を保っていた。


隼人君ちにいたセバスチャンは例のゴミ箱から時々、異世界へ帰ったりしていた。

おそらくワインの母親に報告に帰っていたんだろう。


ある日のこと、隼人君の部屋に警察が訪ねてきた。


「こんにちは・・・こちらはお井ノ原さんのお宅でしょうか?」


応対したのはワインだった。


「なんでしょ?」


「あのですね、この子ですけど・・・駅前でうろちょろしてるところを保護した

んですが・・・

「こっちだって連れて来られたのがお宅でして・・・」

「お宅の息子さん?」

「案外、しっかりしたお子さんですな」


見ると警察官の背後に幼稚園児みたいな男の子が隠れていた。


「あ・・・セバスチャン」

「あ、あのすいません・・・うちの子です」


「気をつけてあげてくださいね」

「子供を放置したままほったらかしにする親も多いですし、最近、物騒なん

ですから・・・」


「だから、何度も言ってるだろ・・・迷子じゃないって」


セバスチャンは怒っていた。


「はいはい、お母さんに迷惑かけるんじゃないよ」


「どうも、お世話おかけしました」


「いえいえ職務でありますから・・・」


そう言うと警察官はお辞儀して帰っていった。


「セバスチャン・・・あんた、なにうろちょろしてんのよ」


「すいません・・以後、気をつけます」


セバスチャンはずっと幼稚園児のままだったから迷子と間違われたみたいだ。

身なりは子供のくせに、しゃべると、ませたガキだった。


まあ、そのギャップがワインには面白かった。


さて、ワインにエッチをさせてもらえない隼人君はロゼに相談してみようと

考えた。

彼女ならワインの姉だし、そういうことに詳しいと思ったからだ・・・。


大学が休みの時、さっそく吉岡君のアパートを訪ねてみることにした。

ワインにはちょと出かけてくるからって言っただけだった。

ワインは隼人がまた女をナンパでもするんじゃないかって疑った。


ワインと小さくなったセバスチャンとパーシモンを家に残して隼人君は出て行った。


隼人君は吉岡君のアパートの在り処は知っていた。

尋ねると、ロゼがいた。

吉岡君も顔を出した。


「お、上がれよ・・・」

「あれ?ワインちゃんは?」


「家に置いてきた」

「俺、ロゼさんに話があって来たんだ・・・俺にとっちゃ大事な話なんだ・・・」


「なんだよ・・・ロゼとやりたいなんて言うんじゃないだろうな」


「違うよ・・・俺もそこまでは落ちてないよ・・・実は・・・」


そういうと隼人君はワインがエッチを拒否してることをふたりにぶっちゃけた。


「まあ、深刻っちゃ〜深刻な話だよな・・・」


吉岡君は、男の気持ちでそう言った。


その話を聞いたロゼが横からクチを挟んだ。


「そういう話ならパンのほうが詳しかもよ」

「あの子、経験豊富だから・・・」


「え?そうなんだ・・・」


「おお、そうだなパンちゃんならいいアイデア出してくれるかもな」


そう二人に言われた隼人君は藁をもすがる気持ちでパンに会いに行ってみる

ことにした。

ロゼが言うには、パンは今、インスタント焼きそばにハマってるから持って

行ってあげたら喜ぶよって教えてくれた。


その足で隼人君は健斗のアパートに向かった。

吉岡君のアパートから最寄りの駅から電車に乗れば15分程度で健斗が住んでる

もよりの駅に着いた。


そこから徒歩で5分・・・健斗のアパートに到着した。


「パンさん、いるかな」


そう言って健斗の部屋のチャイムを鳴らした。


出てきたのはベンジャミンだった。

この間、ベンジャミンとは会ったばかりだったが、なかなか見慣れない風貌だった。

顔色の悪い死神みたいな男だったから面と向かうとちょっとビビってしまう。


隼人君は少し後ずさりした。(⌒-⌒; )


つづく


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