第12話:隼人君のゆくえ。

男は案外、独占欲が強い。

たしかに隼人君はワインとエッチがしたかったが、それをすることで彼女が

自分の女だと言うあかし・・・確信が欲しかったのだ。


エッチの本質がなんなのか快感すら知らないワインにはエッチをすることが

そんなに大事とは思わなかった。


心さえ繋がっていたらそれで幸せと思っていた。

言ってみれば考えは性に関してはまだ、お子ちゃま。

普通ならセックスが飯より好きなニンフなのにね。


ってことで、とうぶん隼人君はワインとのセックスは望めなかった。


いつさせてくれるのかはワイン次第ということか・・・。


でも、そんなことしてたら男は浮気してしまうかもな生き物。

ひとりでも処理できないこともなかったが、彼女がいるのにそんなこと

したって惨めなだけだった。


隼人君はワインに対する愛情が消えてなくなるわけじゃなかったけど

心と体は別物。

両方満たせたら言うことはない。

でも、それが叶わないなら、別の方法で欲求を満たすしかない。

考えるまでもないこと。


だから隼人君は大学の女子たちでなんとか欲求を満たそうと必死だった。

でもデートくらいはしてくれるけど、世の中はそんな甘くない。

今更セックスまではなかなか持ち込めない。


こうなったら風俗って手もあったが・・・金を出し欲求を満たすなんて

愛のないセックスをしたってそんなのやっぱり虚しいだけ・・・じゃひとりで

自分を慰めるのと、たいして変わんない。

みじめな思いは男としてのプライドが許さなかった。


そんな中、隼人君は学校が休みの日は家にいることが少なくなった。


当然、寂しいのはワインなわけで・・・

隼人君に家にいてくれるよう頼んだが・・・家にいても退屈だからと出て行く始末。


隼人君が家にいない間、彼はどこでなにをしてるんだろうって心配になった

ワインは隼人君がでかけた時、こっそり後をつけた。


で、隼人の後をつけてワインが見たのは・・・隼人君が駅の待合で女子を

ナンパしている光景だった。


「ねえねえ・・・今、暇?」


「よかったら俺と遊ばない?」


まあ、最初は断られていたが、数をこなすと中には隼人君の後をひょこひょこ

ついていく女子もいた。


ワインはそのまま、そっとふたりの後をついて行くと、ふたりはどこかのカフェに

入って隼人君は女子となにやら楽しそうにおしゃべりしていた。


なにをしゃべってるのかは、分からなかったが、それでもあんなに楽しそうな

隼人君の顔を久しぶりに見た気がした。

ワインにはじめて声をかけた、あの時以来かなってワインは思った。


ふたりは、手なんかつないだりして、まるで恋人同士のようだった。


「なに、あの女・・・嬉しそうにヘラヘラして・・・」

「隼人も隼人だよ・・・あんな女のどこがいいっての・・・」


そのまましばらくふたりの後をついていくと、休憩3,000円・・・カラオケあり

なんて看板が出てる店の前で止まった。


隼人君と女はなにやら、もめてる様子で隼人君が女の子を急かしてる様子だった。

女の子はためらってるふうで首を横に振っていた。


ワインは隼人君は、なにをしてるんだろうって不思議に思った。

そこがホテルなんて、もちろんワインが知ってるわけがない。


でも、あまりもめてるようだったので、たまらずワインは声をかけた。


つづく。


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