第9話:ワインのヤキモチ。

ワインはロゼのアパートを出て家に帰ろうかと思ったが、せっかく

ここまで出てきてるんだからと、ついでに隼人君の大学へ行ってみることにした。

隼人君の匂いを嗅いで大学まで30分ほど飛ぶと生い茂った林の間に大きな

建物が見えた。


「ここだね・・・隼人の大学・・・隼人はどこかな?」

「大勢、人がいるから見つからないかも・・・」


ワインは地上に降りると、とりあえずそのあたりを散策してみた。

ひととおり見て回ったワインは隼人を探しに教室に入ってみようと思って

いたら・・・

まさにグッドタイミングで隼人を見つけた。

見ると女の子三人と楽しそうに話しながら校舎から出てきた。


ワインは別に自分が悪いことをしてるわけじゃないのに木陰に隠れた。


「なんだ、あいつ・・・鼻の下伸ばしちゃって・・・スケベ男」


ワインは少し、ヤキモチをやいた。

別に自分の彼氏でもない隼人に・・・。


ワインはハッとした。


(私、隼人にヤキモチやいてる・・・)


そこで自分が隼人のことを多少なりとも好意を持ってることに気づくワインだった。

そんなつもりなかったのに・・・。


そんな想いは初めてだった。


(これが人を好きになるってことなの?、ヤキモチが?)


そう思うと、なおさら胸がときめいた。


「ダメダメ・・・人間なんか好きになっちゃ」

「私はそのうち異世界に帰っちゃうんだから・・・好きになっちゃったら

別れる時、辛くなっちゃうじゃん」


でも自分の気持ちに嘘はつけなかった。


(私ってバカだ・・・ヤキモチなんか焼いて・・・)


(相手は人間だよ・・・お姉ちゃんには見栄はって隼人のこと彼氏って

言ったけど・・・)

(まだ、何も始まってないし・・・)

(なんなの、この気持ち・・・胸が苦しい)


ワインは隼人に合わず、そのまま彼のアパートに帰って行った。

なんとなく自分だけが取り残された気分だった。


隼人君が帰ってくるまで、ワインにとっては長い時間だった。

気持ちの整理がつかないと何もしたくない。


ベッドに横になると余計なことが頭をよぎった・・・隼人は私のこと

片思いだなんて言っといて大学じゃ他の女の子と仲良くしゃべって

もしかして浮気してるんじゃないの?


本当は大学に愛を育んででる女子がいたりして・・・許せない・・・そんな

こと無理・・・。


うそ・・・私・・・なんでそんなこと気にするの?

隼人は私の彼じゃないでしょ・・・だったが気にすることないじゃない。

誰を好きになったって隼人の自由だし・・・私がとやかく言える立場じゃないし・・・居候なだけで・・・。


だけどな〜・・・切ないんだよね、揺れる乙女心なんだよね


そして隼人君が大学から帰って来るとワインはまたベッドで寝ていた。


「ただいま・・・帰ったよワイン・・・」

「寝てるのか?」


ワインはウソ寝をしていた。


彼女は隼人君が女子たちと楽しそうにしてるのが気になって気になって、

余計なことを考えすぎて頭がボーッとしてフテ腐れていた。


ワインはいきなり起き上がって振り向くなり隼人に言った。


「あの女子たち・・・隼人のなに?・・・どう言う関係?」


「は?・・・女子たち?・・・なに言ってんの?唐突に・・・なんのことか

さっぱり分かんないけど・・・」


「大学で、女子たちとイチャついてたじゃない・・・」

「私、見てたんだからね」


「え?ワイン・・・大学まで来たのか?」


つづく。


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