第8話:ワイン吉岡君のアパートを訪ねる。
隼人君は大学があるからいいがワインは隼人がいなくなると、たちまち暇人になる。
どうしたもんかと悩んだ末、姉のロゼのところに行ってみることにした。
普通なら居場所が分からないとたどり着けないんだがワインは犬の何倍もの臭覚を持ってたので姉の匂いを辿っていけばどっちに方面のロゼがいるかは分かっていた。
しかも乗り物なんか不要、風に乗ることができるので空を飛んで行けた。
なんちゅう都合よくて便利な娘なんだろうか・・・。
隼人君のアパートから飛ぶこと30分、ロゼの匂いが強くなってきた。
誰かがワインが空飛んでる姿を見たら、たぶん精神科へ行くだろうね。
人が空を飛ぶなんて人間界じゃありえない光景だから・・・。
「このへんかな・・・」
ワインは風から降りるとご近所を散策した。
ロゼの匂いがめちゃ強い家を一軒見つけた。
そこは2階建て共同住宅・・・お世辞にも今ふうとは言えなかった。
何十年も昔からあるアパートって感じ。
もっともワインはそんなもの見るのは初めてだったんだけど・・・。
アパートの入り口の横の壁に「フラワーコーポ桜木」って看板が張り付いていた。
一応誰の家に居候になってるかはロゼから聞いていた。
もちろん吉岡君の部屋なわけで二階の二番目の部屋がロゼがいる部屋だって
言ってたので、たしかめるとドアの横に表札には「吉岡」ってへたくそな字で書いてあった。
その部屋のドアのチャイムを押した。
しばらくすると現れたのはエプロン姿のロゼだった。
「お姉ちゃん・・・来たよ」
「うそ〜、ワイン、まじでこっちへ来たんだ?」
「よく来たね・・・上がって上げって・・・」
そう言ってロゼは部屋の中に案内してくれた。
狭さは隼人君の部屋とさほど変わらなかった。
「お姉ちゃん、どうしたのエプロンなんかして・・・」
「似合ってる?」
ロゼは吉岡君の家に来てから甲斐甲斐しくやってるようだった。
しかもロゼをよく見ると頭のツノがなくなっていた。
「お姉ちゃん、ツノは?・・・まさか取っちゃったの?」
「そ、整形しちゃった・・・会う人、会う人にそれツノですかって聞かれて
ウザいし・・・」
「彼がツノ取っちゃったほうがいいって言うもんだからね」
「すっきりしてるでしょ」
「うん、そっちのほうがいいよ・・・」
「ツノなんて生えてたって役にたったことないでしょ」
「で?今は、お姉ちゃん一人しかいないの?」
「彼は大学に行ってるからね、私は留守番」
「私の彼も大学生だよ」
「彼って?」
「え?ワインいつこっちに来たの?」
「昨日だけど・・・」
「昨日来て、もう彼氏できたの?」
「ナンパされたの」
「ナンパ?」
「・・・で、?もう彼氏なの?」
「だね・・・」
「井ノ原 隼人って言うの、その彼・・・」
って彼氏なんて言っていいんだろうか?
よく考えてみたら、お互いまだ認め合ってないはずなんだけど・・・。
「例の場所からこっち来たの?」
「そう出たところがゴミ箱だった」
「あそこの境界線、開きっぱなしだからね」
「ベンジャミンが・・・・ベンジャミン知らないわよね、ワイン」
「ベンジャミンなら知ってるよ、山羊でしょ」
「向こうで何度も会ってるもん・・・」
「あいつ、どこまで顔が広いんだろ」
「あいつも今、この人間界に来てるよ・・・パンって子「ニンフ」の
小間使いみたいなことしてるよ」
「へえ、そうなんだ・・・」
「そもそもあいつがあのゴミ箱に穴を開けたんだからね」
「で、塞げずにいるから未だにあそこからいろんなやつが、この人間界に
来てるんだ」
「まあ、私もベンジャミンが開けた穴から来たんだけどね」
「そうなのね・・・ナンパか〜・・・」
「なんだか姉妹で似てるね・・・私も来てすぐに拓巳の彼女になったから」
「あ、彼氏の名前、拓巳っていうのよ、
「で、あんた、もうその隼人って人と寝たの?」
「まだだけど・・・」
「そか・・・まあ、あんたは男をまだ知らないからね」
「急ぐこともないか・・・エッチしなきゃ老化もしないしね」
「あんたの彼氏も大学生って言ったよね・・・」
「拓巳が通ってる大学と同じだったりしてね」
「私の彼、隼人って言うんだけど、◯×工業大学ってところに通ってるって
言ってた・・・」
「あはは、同じじゃん、うそみたい・・・」
「もしかしたらダチだったりして・・・」
「意外とそうかもよ・・・拓巳が帰ってきたら聞いてみよっと」
「今度、私の彼氏・・・隼人を紹介するね」
「とりあえずさ、今日はこの世界に来たってことだけ伝えに来たから・・・
これからいつでも会えるね」
「そうだね、落ち着いたらみんなでどこかに遊びに行きたいね・・・」
「ワインの彼氏とやらも見てみたいし・・・」
「見てもいいけど、取らないでよ」
「それは、あんた次第だね・・・もたもたしてると取っちゃうかも・・・」
って冗談よ・・・今のところ拓巳一人で大丈夫だから・・・」
「じゃ〜ね、お姉ちゃん・・・また来るね・・・」
「今度は拓巳がお休みの日に来て、紹介するから・・・ね」
「分かった・・・それじゃ〜ね、まったね〜」
つづく。
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