第2話:ナンパされるワイン。

「キャン・ユー・スピーク・ジャパニーズ?」


ワインが振り向くと黒いバケットハットを被って黒のパーカーにヨレたジーンズ。

そんな格好の一人の青年がたっていた。

髪は金髪と黒のメッシュ・・・背は、ワインより少し高そう。

ワインと同じで左耳に同じようにピアスをしていた。

だけど彼は魔法使いじゃなくてただの人間の男子。


「は?・・・な、なに、なに?」


「あ、君、日本語分かるんだ・・・」

「君、どこからどう見ても外人だよね」

「ねえ、・・・そんな格好して寒くないの?・・・まじ風邪ひくよ」

「プールかなんかの帰り?・・・プールにしては時期はずれじゃん・・・」


(なんだ、こいつ・・・)


「日本語が分かるなら、話が早いわ・・・でさあ・・・今、ヒマ?」

「もし、ヒマだったら俺と遊ばない?」

「つったって・・・変なことしたりしないからさ、誓って」


「なんなの?」


「ナンパですけど・・・」


「ナンパ?」

「なんぱ・・・ってなに?、分かんないんだけど・・・」

「あんた・・・誰?」


「俺?俺は、井ノ原 隼人いのはら はやとって人」

「現在、◯×工業大学に通ってる学生、歳は22才・・・ただいま彼女募集中〜」


「だからさ、いきなりでなんだけど俺の彼女になってくれるとなおさらハッピー

なんだけど・・・ 」

「君、まじで俺のタイプなんだよね」


「ふ〜ん」

「あんた・・・そうやって女見たら誰でも声かけてるんでしょ」


「そんなことないよ」

「俺は俺のタイプって思った子にしか声かけないからね」

「言っとくけど、俺は誰にでも声かけるわけじゃないんだぜ」

「俺に声をかけられるってことは、ビジュアルが抜群にいい証拠だから・・・」

「TGCのランウェイ歩けるような子じゃないとナンパなんかしないから」

「だから、君はイケてるってこと」

「逆にさ、男に声もかけられないって不幸だって思わない?・・・」


「タイプって・・・そこら中の女みんなタイプなんでしょ?」


「だから、そんなことないって・・・」


「君はさ、めちゃ目立ってるんだよね・・・イケてるって思ったから声かけたの」

「それに君に声すらかけないまま別れたら俺は一生後悔するって思ったから・・・

だから声かけたの・・・分かる?」


「うん、まあね人生、後悔することばっかだからね・・・」


「だろ・・・そうなんだよ」

「ところで・・・君、名前は?」


「なんで見ず知らずの男に名前教えないといけないの?」


「うん・・・まあその判断は正しいと思うけど・・・」

「たしかにそうだけど・・・教えてくれないんならゴン子さんて呼ぶけど」


「なにそれ?・・・」


「男なら名無しのゴンべえだけど、君、女だから名無しのゴン子さん」

「ね、ゴン子さん?」


ワインはクスッと笑った。


「あなた、面白い人ね・・・隼人」


「うん、よく言われる」


「どしようかな・・・」

「私・・・・・本当は困ってるんだよね」

「・・・ほんとは・・・どこが何か、何がどこだか全然分からないし」

「私、今日ここに、初めて来たばかりだから・・・」


「じゃ〜俺が、一緒にいて、いろいろ教えてあげるよ」

「ね、だからさ・・・名前くらい教えてよ」


「ワイン・・・ワインだよ・・・それが私の名前」


「ワインちゃんって言うんだ・・・やっぱり外人なんだ」

「フランス人とか?」


「ふうらんしじん?ん〜・・・?・・・私、ただのワインだよ・・・」


これがワインと隼人の出会いだったのです。


「ワインちゃん、こんなところで立ち話でもなんだから歩かない?」


「いいけど・・・」


ワインは隼人君の言われるままに後をついていくことにした。

今は、隼人君だけが頼りなワインだった。


最初は軽いやつだなって思ったけど、隼人君はなかなかのイケメン男子で、

ちょっと軽めだけど嫌な印象じゃなかった。


でも人間の男のことはワインは分かっていた。

分かっていたというか、教えられていたってのが正しい。


向こうの世界も人間界でも男は油断できない生き物・・・甘い顔をみせると

すぐに女に手を出そうとする。

始末に負えないのが男・・・それが男の本性だし本能だってそう教えられていた。


つづく。


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憂鬱はゴミ箱からやって来る2。(エッチはお預け) 猫野 尻尾 @amanotenshi

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