がんじがらめ
しづ
第1話
作り物みたいに綺麗な顔をした男性が自宅のリビングに座っていた。
あまりにも白く透明感があり、毛穴一つ見当たらない肌、整った鼻筋、私より長く濃い睫毛、どこか色っぽい唇。
『今日からあなたのご主人様になる
義母、まり子が淡々と告げる。
『は?』
『よろしくね、モナ』
声まで美声だった。でも私は何も言わない。だって意味がわからなすぎる。
ふと横を見ると、義母妹の利華がニヤニヤと私を見ながら笑ったいた。
『早速だけど、モナの部屋に行こっか、どこ?』
私は当然応えない。当たり前だ。大体、初対面のくせにさっきからモナ、モナって馴れ馴れしすぎる。
『階段を上がって1番最初の部屋です』
無言の私に代わりまり子が答える。
『分かりました。ありがとうございます。じゃあ、行こっか』
最後の言葉は私に向けられたものだった。
そのくせ、私の反応なんか見もしない。自分だけ立ち上がり、スタスタと歩き出す。
私は席を立たず、黙って座り続ける。
『早く行きない』
まり子が冷たく言い放つ。私は溜息をつき、自分の部屋に向かう。
立ち上がったと同時に立ち眩みがしたが、気にせず歩く。重度の貧血を患う私にとって、階段は億劫な物でしかない。手すりをしっかりにぎり、段差を踏み外したりしないようにゆっくりと上がる。
がんじがらめ しづ @sidu_ten
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