第11話

 薄暗い路地の奥、賑やかな市場の隅に位置する露天商の店。色とりどりの布や果物、手作りの装飾品が並ぶなか、ひときわ目立つのは地元で有名な愚連隊の一団だった。彼らは無造作に集まり、周囲を見渡していた。


 その中心には、リーダーのマルコがいる。彼は先ほど、酒場でグレソを勧誘しようとしていた男だ。周囲に流れる不穏な空気を作り出していた。彼の目が露天商を注視し、今まさに言葉を発しようとしたとき、果物を売る若者の商人が気付く。


「お、お前ら…何の用だ?」若者は恐る恐る声を上げ、その手は果物を握るが、震えていた。


「おい、聞けよ」とマルコは冷たい口調で言い放つ。「今日はショバ代の期限だ。お前、ちゃんと払っているのか?」


周囲の空気が一瞬凍りつく。商人は目を大きく見開き、言葉を失った。「え、そんな…」


「ふざけるな!お前がこの場所で商売を続けるためには、俺たちに金を渡す約束だろう。裏切ったらどうなるか、わかっているのか?」マルコの声は低く、圧力が加わるように響く。


他の愚連隊のメンバーも、彼の横に集まり、気圧させるように立ちふさがる。商人の周囲に立つ彼らの姿は、まるで獲物を狙う猛獣のようだった。


「俺は…まだ払っていない!」商人は動悸を抑えようとするが、声の震えは止まらない。彼は必死になって言葉を並べる。「でも、これからは…」


「今さらそんなことを言ったって無駄なんだよ!」マルコは思わず怒鳴った。「見せろ、ここにある売上金を。俺たちに分け前を渡せ。」


恐れおののく商人は、必死に財布を探り始めたが、無駄に時間がかかる。「ほら、早くしろ!お前が今日ここに居続けるためには、俺たちの言うことを守るしかない!」


「わかった…わかったから…」彼はギリギリの声で、財布の中から小銭を出し、震えた手で渡そうとする。余裕のない目つきで、彼は周囲の愚連隊の視線を気にしていた。


マルコはニヤリと笑い、その小銭を受け取る。周りのメンバーたちも嘲笑を浮かべ、勝ち誇った雰囲気を漂わせる。「俺たちが取り仕切っているから、お前らは安全に商売ができるんだ、忘れるなよ。」


商人は言葉を失い、ただうなだれるしかなかった。マルコはずんずんと後ずさり、他の仲間たちと共に店を離れた。「忘れるな、次はもっと気を引き締めて商売をしろよ。お前らは俺たちにまだ返済せねばならない。」


露天商の背にかかる影。それは、愚連隊の取り決めによる重い圧力を象徴するものだった。商人は、心の奥で恐れと絶望を感じながら、日々の生活を続けるしかなかった。

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