第5話
薄暗い酒場の隅っこで、グレソはグラスを握りしめ、沈黙していた。
酒は喉を通るが、何も感じない。
目の前の酒瓶も、賑やかな酒場の喧騒も、すべてが遠く感じられた。
彼の心は、重く沈み込んでいる。
ノウキンとケンジャ。
彼らの顔が、脳裏に焼き付いている。
あの日からもう5日も経った。
戦場で使うつもりだった薬草や魔石は、バックパックの中で無意味な重みに感じるだけだ。
すべて二束三文で小道具屋で買い取ってもらった。
金はすべて酒にして飲んでしまうだろう。
「あの魔法陣は…本当に使えなかったのか?」
グレソは、呟くように独り言を言った。
シルヴィアの言葉が頭をよぎる。
「…あの魔法陣は、あなたを安全に戦場へと送り届けることができたはずです」
「…なぜ、調査結果を教えてくれたんですか?」
魔法陣の転送に失敗した。
これは大失態のはずだ。
あの魔術研究所の主任も所長もただでは済まないのではないかと思った。
「私は、あなたが真実を知るべきだと考えただけです。そして、あなたは今、新たな道を歩むべきです。」
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