第2話
「ちくしょう!こんなの無駄死にじゃないか!ふざけやがって!」
三人一緒に声のするほうを覗き込んでみると、男が一人、魔法陣を挟んで、魔術師に向かって叫んでいる。
ドスの効いたその声の持ち主は意外と細見で神経質そうな見た目をしている。
「何が特別功労金が親族に支払われるだ?この額なら俺たちの命はお前らの十分の一程度の価値ってことか!?バカにしやがって!」
あれは雑兵として集められた連中の一人だ。身なりと体つきを見ればよくわかる。
とても戦闘で役に立つとは思えない。
「飯焚きの手伝いでもしてりゃいいんだよ」
ノウキンが聞こえるか聞こえないかギリギリ判別の付かない程度の声量で呟く。
「おい、聞こえるぞ」
ケンジャがノウキンを窘める。呟きが伝わったのかどうかはわからない。
「どうか、勘弁してください!」
今度は泣き声が聞こえてきた。新品の魔術杖に上物のローブを身に纏っている。いかにも貴族のお坊ちゃんという風貌だ。
「僕、外交専門のエリートクラスに進学する予定があるのです。戦場なんて行っている暇はなのです。わかるでしょう!」
魔術師は無言で渋い顔をして、必死に涙目で懇願している貴族を見つめている。
「ちっ・・・嘘つきの白痴め、よく言う、一度でもその杖で練習したことがあったのかよ」
ケンジャは吐き捨てるように言った。
そしてズイと貴族の方へ向かおうとするのをおい、止めとけとノウキンが止めた。
そして三人の順番が来たと呼ばれる。
「そのクラスの募集人員はとっくに埋まっているというのに」
ブツブツ言いながらケンジャは部屋に向かった。二人も後に続いた。
魔術師は三人に恭しくセレモニーを施すと、魔法陣の中に入るよう促した。
「さあ行こう!俺たちで世界を救うんだ」
三人は魔法陣の中心へと足を踏み入れる。すると、魔法陣が青白い光を放ち始めた。
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