友情、とは
「親の借金の肩代わりとして、命を懸けて戦ってんの!?」
穴場だという、海水浴場の誰もいないエリアの砂浜に座って海を見ながら……俺は、話せるだけの情報を総司に話そうとした。
すると序盤から驚かれてしまった。
まぁ、そうか。普通の感覚でいえば、命懸けで戦うことはおかしいことなんだろう。
「そんな親、親でもなんでもないじゃん。借金なんて関係ありませんって、突っぱねれば良かったのに」
「そんな発想が頭になかった……それに、覚えてる限りじゃあ別に悪い親じゃなかったんだ。だから……」
「だとしても……納得できねぇよ」
どうして総司が納得できないんだろうと不思議に思いつつ、続きを話す。
「さっきの怪人は、謎の組織によって配られているアプリによって姿を変えられている……いわば、ほとんど被害者みたいなものだ」
「人を襲おうとしてたのに?」
「たまに力を手に入れたことで調子にのる輩がいる。そういうのを取り締まるのが俺たちの仕事だ」
「謎の組織って?」
「正直なところ、俺も分からない。上司に聞いても曖昧な返事しか返ってこないから、なにが分かっていてなにが分からないのかも不明だ」
「そんなん滅茶苦茶だよ! 俺、さっき話してた偉い奴と話してつばきを解放してくれって頼んでくる!」
「場所も分からないのに無茶をするな」
俺は立ち上がりかけた総司の肩を掴み、とりあえず落ち着かせようとする。
「どうどう、どうどう」
「俺はウマかっての!? 本気で俺は怒ってるんだからな!」
「それは、何故だ?」
「何故って……」
どうして総司がここまでムキになっているのか、本気で分からなかった。分からない俺のことが分からないとでも言うように、総司は押し黙ってしまった。
「……さっき友達と言ってくれたことにも、感謝はしている。しかし、名前を知って数時間の関係なのに」
「だとしても、一緒に海に来たら友達だろ!?」
「そ、そうなのか?」
「そしてお前は俺を助けようとしてくれた。それだけで、怒る理由になるよ」
「……でも、俺がもし戦うことから逃げていたら、お前を助けようとしなかったかもしれない」
「それは仮定の話だろ? 実際助けてくれたんだ。で、そのあとに事情を聞いたら怒るって」
「……そうか」
怒られることには慣れているつもりでいたが、こんな風に同年代から怒られることはなかったなと思った。だからか、どう反応を返していいのか分からない。謝ったら謝ったで、怒られそうな気がした。
「怒ってくれることは正直なところ、嬉しいようなよく分からない感情だ。だって、親は悪い人間じゃなかったから。蒸発したとしても、それは変わらない」
「……」
「それに、今の組織には学生としての生活を保証されている。だから、そこまで悪いところでもないと思う」
「そうか、そうだよな……」
何かを察したように総司は、そう呟いた。
「だから、えっと……」
急に言い淀んでしまった。言い慣れてないことだから、仕方ないとはいえ。しっかりと伝えなければいけないところで、そんな。
「……友達でいてくれれば、それでいい」
「それならいいんだけどさ!」
そのまま総司は立ち上がって、海の方へと走っていった。ついていくと、バシャリと水をかけられる。
「やったな……!」
そのまま水をかけ合って、気がつくと俺たちはびしょびしょになっていたのであった。
しばらくしたら、乾くだろうか……?
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