第1章 砂漠の国から落っこちた 第1話
照りつける太陽。灼けつく熱波。乾いた風にうねった砂が、まるで生き物のように大地を這う。
悪路を2時間バスに揺られ辿り着いたのは、メソポタミアの砂漠地帯にある小さなオアシス都市。
「シュクラン」
運転手に挨拶をしてバスを降りた。激しい揺れでパンパンに腫れたお尻をさすりながら、鋭い日差しから逃れるためナツメヤシの木陰に身を滑らせた。
んん〜っ!!両手を大きく天に伸ばして、凝り固まった骨や筋肉を整えていると、低い美声が日本語で呼びかける。
「よぉ、お嬢。」
日に焼けた褐色の肌に映える白い歯。次元大介みたいなあごひげ。ボサボサに伸びた髪を使い込んだ迷彩柄のサファリハットに捩じ込み、大門警部サングラスというなかなか渋いイケオジがそこにいた。
「ダンちゃん。」
彼は
母は私が幼い頃に亡くなった。祖母と伯父の住む母の実家で育った私にとって、父も伯父も『父親』だった。
古代帝国アッカドの幻の都アガテを探し求め2人はチームを組んでいた。5年前、遺跡探索中に砂嵐に巻き込まれて父は消息を絶った。以来、ダンちゃんはこの砂漠の国に移り住み、消えた父と遺跡を探し続けている。
それから3年後に祖母が他界。16歳で伯父の住むこの国に降り立った。首都で学校に通い、卒業後は伯父の紹介で国立博物館に勤務している。
それが私、
ちなみにダンちゃんは生粋の日本人だが、「俺はダンディなダンちゃん」と本人が仲間たちに強要している呼称である。
「来たな、お嬢。」
ごつごつした手で私の頭をてっぺんからぐしゃぐしゃと撫でる。
「ちょっと、それやめてってば!もうこどもじゃないんだからね。」
大きな手を振り払い、顔をしかめて講義するが「ガハハハッ!」と豪快に笑い飛ばされた。
「さて、例のばーさんに話はつけてある。まずは宿に荷物を置きに…」
「今すぐ会いたい!」
食い気味な即答に苦笑いしながら、右手でサファリハットを深く被り直すダンちゃん。
「ま、だろうな。どぎついばーさんだ、覚悟しろよ。」
「うん。」
いよいよ来たるその時を前に、思わず武者震いするのだった。
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