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運動が嫌いなわけじゃない。けれど、ほぼ綾ちゃんの付き添いって感じだし…。
「あはは、そんなに難しい質問だった?ごめんね、困らせちゃって。ダンス初心者でも全然大丈夫だし、興味があったらまた見に来てよ」
そう言うと、さて、と立ち上がって半分ほどなくなったビールジョッキを持ってまた別の席に行ってしまった。
そんなに深刻そうな表情をしていたんだろうか。笑われて、顔が熱くなっていくのがわかる。
冷たい飲み物で冷まそうと自分のグラスを手にとれば、空になっていたことに気づいた。
「うーめっ。呑んでる〜??」
「うわっ」
タッチパネル式のオーダーで飲み物を選んでいると、綾ちゃんがドンっと背中に勢い良く体当たりしてきた。
私の背中に凭れる綾ちゃんはすっかり出来上がっていて、「あはははは〜、ビックリしてる〜〜。うめがビックリしてる〜。あははは!」と耳元で笑っていた。
「綾ちゃん…お酒くさいよ」
「そんなことないもーん。あ、うめ何頼むの〜?私プレモル!」
「プレ…?え?何?」
私の首に回したその長い手を伸ばして、ひょいとパネルを奪うと、酔ってる割には手際のいい操作で飲み物を注文した。
牧村さんが去って空席となった隣に綾ちゃんが腰を落ろす。
「ていうか飲みすぎだよ。大丈夫なの?」
「大丈夫だって〜。あ、ねえこのあとさ、ゆーすけくんたちと二次会行くんだけど、うめも行かない?」
ネイルでツヤツヤに手入れされた綺麗な人差し指の先には、さっきまでずっと綾ちゃんと会話していた短髪の男性。
金に近い色で、ツーブロックの刈り上げに両耳ピアスはジャラジャラ。彼のファッションはまさしくダンサーって感じ。
いかつそうで私は怖くて近寄れない部類の異性だけど、綾ちゃん的にはものすごくタイプだったらしく、その"ゆーすけくん"とやらに熱い視線を送っていた。
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