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綾ちゃんの手には、カラーチラシの束。見覚えのあるそれらは、入学式に配られたサークル勧誘のためのチラシだ。


初日に目は通したものの、着慣れないスーツに疲れ帰ってすぐに寝てしまい、そのままファイルにいれっぱなしだった。


あとから知ったことだけど入学式はスーツじゃなくても良かったらしい。



「一応、言っておくけど私運動できないから」



胸を張って言えることではないけど、中学高校と帰宅部なのだから今更体力なんて知れている。おそらく平均以下だ。



「ん、だーいじょうぶだーいじょうぶ!サークルっていってもそんなにハードなの多くないし。集まりみたいなもんだって!多分!」


「多分って。ていうかインカレって何?何するの?」


「インターカレッジって言って、他の大学のサークルにも入れるの。要は他大学同士のサークルって感じかな。何?やっぱりうめも興味ある?出 会 い ♡」


うふっとお姉さん風に笑う綾ちゃん。



「出会いって…」


そうか。確かにサークルに入ればいろいろ広がるだろう。


中学は吹奏楽部に所属していたけど、1年の途中でやめちゃったし、高校は帰宅部でそういう青春っていうものを経験してこなかった。


折角の一人暮らしなんだし、そうだよね。




「やってみようかな…。サークル」


「え!ほんとっ?」



小さく、零した私の言葉を聞き逃さず、ぱあっと目を輝かせる



「わかんないよ?もしかしたらやらないかもだからね。いい?」


「いーって、いーって!とりあえず、新歓イベントに参加してみようよ!ほら、どこから行く?」


何事も長くは続かない性分で自信はないけど、まるでお祭りの出店を選ぶかのように綾ちゃんがはしゃぐから、それ以上は何も言わないことにした。

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