第161話

「お前に本気になった。どうせあそこには戻れない。妊娠できないお前の場所はないんだよ。だったらここにいろ。俺の組は浅見のとこより遥かに小さい。後継ぎなんか養子でも俺の側近の子どもでもいい。でも浅見組はそうじゃいかないだろ?」



ソファーから白城も立ち上がると、私をまるで壊れ物のように包み込んだ。放たれた言葉はとても冷たいのにその体はとても暖かい。弱い私は今にも縋り付いてしまいそうだった。



「まぁ、ゆっくり考えろ。浅見は迎えに来ないからいくらでも時間はあるさ」




私の頭を撫で部屋から出ていけば何の音もしなくなった。それはどこか急に別の世界へ連れて行かれたようで。



颯…



頭が動かない。



苦しい…



私は、いらない?



この機会に手放したい?



颯の気持ちが、私には分からないよ…




もう何も考えることもままならず、私は一度、プツンと大切な人たちのことを考えることを放棄した。

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