第159話

「大丈夫か?」




眠る前、最後に見た男に体を起こされ、平然と私の隣へと座れば



「なに?」



抱きしめられていた。



「匠だ。白城匠(シラギタクミ)」



どうやらこの男の名前らしい。何も聞かないところがやっぱり颯に似てると思った。



「お前寝過ぎだろ。あれから丸一日寝てたぞ」




「えっ?」



びっくりした。ここのところずっと長く眠ることはなかったのに…。また前の私に戻ってしまったようだった。



「風呂入って気分変えてこい。服も用意してある」



そう言うと部屋の中にあるのか顎で指した一つの扉。




「ありがとう」




そう言い立ち上がると




「そう言えば、浅見組に行って来たぞ」



「えっ!」



何事もないように放たれたその言葉に勢いよく振り返った。

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